看護師による助産行為問題の新たな動向について

弁護士園田理(常任理事)(2006年10月センターニュース223号情報センター日誌より)

違法な医療慣行

  去る8月24日、神奈川県警により、横浜市内の堀病院やその関係先に捜索差押えが行われ、これが大きく報道されました。容疑は、産婦に対する内診行為を看護師や准看護師に行わせていたという保健師助産師看護師法違反です。

  報道によれば、捜索を受けた病院側は、産婦に対する内診行為を看護師などに行わせていた旨認めているとのことです。

  弊センターは、一昨年来、内診行為は医師・助産師しか行うことができず、助産師の資格を有しない看護師に内診行為を行わせることは保助看法に違反し、そのような違法な医療慣行は早急に改められるべきだと述べてきました(弊センターホームページ掲載の厚生労働大臣日本産婦人科医会に対する申入書厚生労働省内の検討会宛の意見書をそれぞれ参照ください)。今回の報道によれば、保助看法に反する違法な医療が、年間出産数が国内有数の約3,000人にも及ぶ病院で大々的に行われていたということです。誠に残念であり、また、問題の根の深さも感じます。違法な医療慣行が早急に改められるよう、改めて国には、医療機関などへの一層の指導の徹底とともに、助産師の就業促進を図るなどの対策を取ることが求められます。

日本産婦人科医会の見解

  ところで、この警察による病院への捜索について、日本産婦人科医会は、去る8月30日付けで、次のような見解を公表しています。「本会としては、『法解釈上、少なくとも、…分娩第・期の内診は助産に該当しない』と考えるので、厚生労働大臣には、現行の枠内でも分娩第・期の内診は出来るように、あるいは、出来ないのであれば、保助看法の考え方を変えるように、本会会長として、要望し続けてきた。」

 「今回の堀病院に対する、保助看法違反の容疑に対する家宅捜索に関しては、…(その容疑が)本会が求めてきた、分娩第・期の内診行為だけであったとすれば、警察当局の、今回の大掛かりな捜査は、極めて不当である。」「今回の事件の有無にかかわらず、本会の姿勢は、決して変わるものではない。」

見解の不当性

  しかし、弊センターが意見書などで指摘してきているとおり、分娩進行が正常範囲から逸脱しているか否かは、内診を構成する多数の診察項目の相関・対応関係を総合して判断されるもので、内診は単なる計測に止まらない高度な医学的判断を本質とする診断行為です。したがって、このような診断行為は、それについて十分な教育を受け、国家の資格試験によって知識・技術があることを確認された者によりなされる必要があります。このことは分娩第・期(分娩開始から子宮口全開大まで)においても変わるところはありません。分娩第・期における内診のみを保助看法3条にいう「助産」から除外する解釈に合理性はなく、日本産婦人科医会の上記見解は不当と言わねばなりません。

  助産師数の絶対的不足が言われ、それが上記見解の実質的根拠のようです。しかし、助産師試験の過去30年間の合格者の累計は4万4,000人を超えると推計されます。助産師資格保有者の就業促進を図ることこそが正しい解決策と言うべきです。

  日本産婦人科医会の動向も含め、今後もこの問題には注目していきたいと思います。