城田健次(嘱託)(2025年7月センターニュース448号情報センター日誌より)
2025年6月より医療事故情報センター嘱託に就任いたしました弁護士の城田健次と申します。
センターニュースには、弁護士リレーエッセイ(2024年8月号)や症例報告(2025年6月号)で2度ほど寄稿しておりますので、名前は目にしている方もいらっしゃるかもしれません。
現在、初代嘱託である堀康司弁護士と前任嘱託である柄沢好宣弁護士が所属する、堀・柄沢法律事務所に在籍しており、日々ご指導いただきながら嘱託業務を務めております。
私は、司法修習期は70期で、今年で弁護士8年目となります。
もともとは現在の法律事務所とは別の法律事務所に所属しており、前の事務所では医療行為の過失が問題となるいわゆる医療事件の取り扱いはありませんでした(このあたりの詳細は先に述べた弁護士リレーエッセイにも記載しておりますので、よろしければそちらをご参照ください。)。とはいえ、かねてより医療事件には興味があり、令和3年頃に医療過誤問題研究会に入会し、その後、医療事故情報センター正会員を経て、現在に至ります。
私の母は看護師をしており、昔から、ほかの一般的な家庭よりは、比較的、医療が身近にあったと思います。テレビをつければ医療現場をテーマにしたドキュメンタリー番組が流れており、当時、深夜に放送されていた海外ドラマの「ER緊急救命室」も随時録画されていましたので、我が家のお茶の間には“医療”が浸透していました。そのような環境で育ったからか、子供ながらに医療に興味をもち、医療の現場で日々かけがえのない人命を救うために働いている医療従事者の方々に憧れを抱いていたのを思い出します。
ここまでの流れからすると、当然、医師を志したのだろうと思われるかも知れませんが、如何せん理系科目が全くできず、医師になる道は早々にして途絶えてしまいました。そうはいってもやはりどこか医療の領域への興味は消えることなく残り続けており、弁護士としての仕事に少し慣れ、自分の興味関心へも心を向ける余裕がでてきたときに、ふと“医療”への興味関心を思い起こし、医療過誤問題研究会に入会し、患者側弁護士の道を一歩踏み出したという経緯になります。
さて、今年は医療事故調査制度の運用が開始されて10年を迎える重要な節目の年になります。これまで先駆的役割を担ってこられた多くの医療従事者やその他関係者の方々の不断の努力により、医療安全の理念と実践が世の中に広く浸透してきたといえます。しかしながら、先のシンポジウムでも指摘があったように、患者側として医療事件に携わっていると、昨今の医療安全の潮流に逆らい、医療安全の実現に向けた実のある取組みを実施しているとは言いがたい場面に遭遇してしまうこともまた事実です。そのようなときに思うのは、安全で信頼できるより良い医療の実現は、医療機関側及び患者側の共通の願いであるということです。そこに疑いの余地はないと思われます。10年という重要な節目を迎えるからこそ、改めて医療機関側と患者側、どちらも目指すべきところは同じであるということを再認識し、双方の立場から、それぞれ医療安全の実現に向けて協働することが求められているのではないかと思います。
私も、医療事故情報センターの嘱託として、日々患者側代理人として尽力されている先生方を陰から支えられるよう、誠実に職務を全うしていこうと思います。同センターの運営に関することも含め、まだまだわからないことばかりですので、会員の皆さまにはご不便、ご迷惑をおかけしてしまうことも多々あろうかとは存じますが、何卒、よろしくお願い申し上げます。