薬事法等制度改革についてのとりまとめ~第三者組織が骨抜きの危機

弁護士松山健(嘱託)(2012年3月センターニュース288号情報センター日誌より)

最終提言から本とりまとめまで

 薬害肝炎事件を踏まえ、二度と薬害を起こさないことを課題とし、平成20年5月に厚労省に設置された「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」は、約2年の議論の末、平成22年4月に「最終提言」を出しています。

  厚生科学審議会は、平成23年2月に「医薬品等制度改正検討部会」を設置し、「最終提言」を踏まえた制度改革について10回に及ぶ議論を重ね、本年1月末に「薬事法等制度改革についてのとりまとめ」を公表しました。

  とりまとめは、市販後安全対策、添付文書の位置づけの見直し等多岐にわたりますが、紙面の関係上、最終提言での安全対策の肝ともいえる医薬品監視・評価組織の設置に絞ってご紹介します。

最終提言の求める第三者組織

 「最終提言」では、薬害再発防止と医薬品行政への信頼回復には、規制実施当局や医薬品企業からの「独立性」、医薬品の安全性を独自に評価できる「専門性」、迅速かつ適切な対応・意思決定をなし得る「機動性」を具備する第三者組織により評価・監視をする仕組みの構築が重要とします。

  そして、最終提言は、この趣旨からすれば、「庁」と同格の独立性を持つ、いわゆる「三条委員会」(国家行政組織法第3条)として設置するのが望ましいが、審議会等は原則として新設しないこととするとした閣議決定(「審議会等の整理合理化に関する基本的計画(平成11年4月27日閣議決定)」)があるため、所轄官庁に従属する「八条委員会」とせざるを得ない場合もあり得るが、その場合でも、厚労省「外」の省庁たとえば内閣府に設置するのが望ましいとしています。

検討部会の結論は?

 これに対して、とりまとめでは、最終提言の示すような第三者組織を設置するべきとするだけで、最終提言の示す検討課題についてなんら踏み込んだ結論も議論状況も示すに至っていません。実際の審議では議論はしていたのに、これでは全く意味がないように見えます。

なぜ?~厚労省の抵抗

 この点、事務局作成の当初のとりまとめ案では、評価・監視組織に関する案として「厚生労働省の厚生科学審議会に部会を新設する方向で検討する案が、評価・監視組織を一刻も早く設置するための案として示された。」との記載がありました。これについては、委員からの提案として出た議論ではない事務局意見を、あたかも委員からの提案のごとく記載するもので、従来の審議内容を歪曲した恣意的なものだとの指摘が委員からあり、後に削除、修正された経緯があります。このように瀬戸際で厚労省側の意向に沿った形での公表が回避された面があり、とりまとめにおいて、最終提言の具体化について一切結論を示さない報告となったことには、最終提言から後退する結論を公的に示すことを避け、前進はしないが後退もしない姿勢を保った点では全く意義がないとはいえません。

まとめ

 議事録その他の公表資料からは、こと本検討部会においては、事務局作成資料等によって厚労省側ができる限り議論の方向性をミスリードしようとする姿勢が窺われます(薬害被害者の委員から最終提言から離れた議論が多い等、会のあり方と進行の改善を求める意見書が出されるなどもしています)。

  厚労省は、政権交代前の閣議決定を強調して、厚生科学審議会の下に部会を新設する方向に導こうとしていますが、閣議決定後にも、消費者庁や消費者委員会が創設されているのであり、閣議決定を持ち出すのは、外部からのチェックを望まない厚労省の建前上の理由と評価すべきでしょう。

  このままでは形ばかりの監視・評価組織ができて、最終提言の趣旨が没却される危険があり、今後の成り行きを厳しく見守っていく必要があります。