死因究明推進会議始まる

弁護士松山健(嘱託)(2013年1月センターニュース298号情報センター日誌より)

死因究明2法成立後の状況

 本年5月の本稿でご報告したように、「死因究明等の推進に関する法律」(「推進法」)と「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」(「死因・身元調査法」)が6月に成立し、死因・身元調査法は平成25年4月1日からの施行となり、また、推進法(2年の限時法)に基づき内閣府に死因究明等推進会議(「推進会議」)と死因究明等推進計画検討会(「計画検討会」)が設置され、10月26日から推進会議と計画検討会がスタートしています。当面、計画検討会が月1回ペースで開催され、平成25年6月に中間報告を行い、同年12月には推進会議で推進計画案を取りまとめ、閣議決定する予定です。

医療版事故調と死因究明制度の棲み分けはどうなる?

  12月の第9回「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(「検討部会」)では、10月にできた「消費者安全調査委員会」と医療事故調査機関の棲み分けの議論がなされました。死因究明制度については推進法16条が「医療の提供に関連して死亡した者の死因究明のための制度は、別途検討すること」と定め、計画検討会もこの点を確認しているので、検討部会において死因究明制度との棲み分けが詰められることになります。
 この点、死因究明2法の制定趣旨である適時に解剖が行われないことによって後に死因が不明になってしまうという問題は、医療事故においても、遺族の承諾が得られず、病理解剖がなされないまま荼毘に付されて死因が解明困難となってしまう場合がある点で共通します。
 そして、医師法21条との関係や捜査機関への通知といった捜査と調査の振り分けに関する議論の関わるところですが、犯罪死の疑いがあり、捜査機関に振り分けられて司法解剖がなされる場合や遺族からの通報や調査機関からの通知によって捜査機関が死因・身元調査法で創設された「法医解剖」(従前の仮称)が実施される場合には承諾なしの解剖がなされます。
 他方、捜査機関に回らず医療事故調査機関が調査する場合の解剖については、大綱案と同じく遺族の承諾による解剖(病理解剖と行政解剖の一類型の承諾解剖)を基本とする場合、遺族の承諾が得られない限り、解剖を実施することができないこととなります。

遺族の承諾のない場合の解剖について

 この点、再発防止に資するためには全例につき均質な原因究明がなされることが望ましいところ、Ai(死亡時画像診断)は万能ではなく、正確な死因究明には解剖が不可欠であることに異論はありません。そして、こと事故原因の解明という点に関しては、遺族が後に解剖に承諾しなかったことを後悔する例が散見されることも指摘されます。この観点から、従来から遺族の承諾なく全例例外なく解剖すべきとの考え方があるところです。
 しかし、今後推進法によって整備が進む見込みとはいえ、いまだ病理医・法医の数が絶対的に不足している現状においては、全例の解剖は直ちには実現困難であり、また、遺体を傷付けることに対する抵抗が依然として強い国民感情の下、遺族の意思を無視して解剖を強行するのは現実問題として相当な困難を伴うであろうことからして、全例の承諾なしの解剖は、将来的ないし段階的な導入の是非は別として、現段階では導入は困難と思われ、承諾による解剖を基本とする制度とせざるを得ないものと思われます。
 もっとも、承諾が得られず、かつ、司法解剖も困難な事例でAi等では死因解明が困難で解剖の要請が高いものについては、モデル事業の調整看護師的なコーディネーターを置いて遺族の理解に働きかけたり、遺族の抵抗を小さくすべく当該医療機関とは別の解剖実施機関での解剖がなされる体制を整備すること等によって承諾率を上げる余地はあります。
 また、死因・身元調査法上、「法医解剖」は、「警察署長」が「死因を明らかにするため特に必要があると認めるとき」に実施「できる」(同法6条1項)ものとされるので、医療事故調査機関が主体となって全例について「法医解剖」を実施するのは同法上は不可能ですが、捜査機関と調査機関の間で「覚書」を交わして協力体制を構築する調整方式(運輸安全委員会(旧航空・鉄道事故調査委員会等))を取って、そのような事例については「死因・・・を明らかにするための措置」(同法1条)として警察に「法医解剖」を実施してもらい速やかに解剖結果を調査機関に還元する仕組みも考えられます。

まとめ

 推進法によって今後、解剖の人的物的資源が整備されることは望ましいことであり、医療版事故調においての解剖に関する体制整備が検討されるべきといえます。
 最後に、死因究明2法については、「自由と正義」12月号で7頁に亘って紹介され(71頁)、「法律のひろば」12月号で特集されていますので、ご一読ください。