平成13年の医療過誤訴訟の概況

弁護士堀康司(常任理事)(2002年6月センターニュース171号情報センター日誌より)


 先頃最高裁から発表された平成13年の医事関係訴訟統計の概要をお知らせします。

提訴件数は800件を越し、未済件数も過去最高に

  平成13年の新受件数は805件に達し、過去最高だった昨年の件数(775件)を上回りました。平成7年以降、毎年過去最高が更新され続けてきましたが、増加の勢いに衰えは見られません。年間の既済件数は715件、平成13年末時点で係属中の件数は1968件で、こちらの件数もともに過去最高となっています。

審理期間は過去10年で最短

 平均審理期間については、平成12年までは35~36ヶ月程度で横ばいとなっていましたが、平成13年は32.7ヶ月(前年比で-1.8ヶ月)となり、過去10年でも最短となりました。審理期間の短縮要因は医療過誤集中部の設置や集中審理の普及などが考えられますが、争点や証人の無理な絞り込みがなされることで審理内容が希薄化してはいないか心配される側面も感じられます。

相変わらず低い勝訴率

 平成13年の既済件数715件のうち、判決で終わったものは331件、和解が315件、取下げ31件(残りは請求の認諾、放棄等)でした。判決で終わったもののうち、勝訴率(一部勝訴を含む)は38.4%でした。年によってばらつきはありますので、これらの数値に例年との顕著な傾向の違いは見られませんでした。

提訴前の証拠保全実施率~6割以上は証拠保全を経ずに提訴

  提訴前の証拠保全の実施率は、平成12年では37.3%、平成13年では38.3%と報告されています。実に6割以上の訴訟が証拠保全を行うことなく提訴されていることになります。医療過誤訴訟全体を俯瞰した場合、まだまだ提訴前に証拠を確保し、十分な準備や検討を行うことの重要性が浸透していないのでは、と危機感を感じました。