迷走注意!~「医療安全相談センター(仮称)」の行方

弁護士堀康司(常任理事)(2002年9月センターニュース174号情報センター日誌より)

二次医療圏ごとに各都道府県が設置へ

  今年4月に厚生労働省医療安全対策検討会議は『医療安全推進総合対策』の中で「医療安全相談センター(仮称)」の設置を提唱しましたが、その設置に向けた準備が各都道府県で開始された模様です。

  この構想は、各都道府県が二次医療圏ごとに患者の苦情や相談に応じる窓口を設置し、それらを統括する中心的な評議会的組織を各都道府県毎に1つ設置するというような内容となるようです。しかしながら、相談を誰が担当するのか、苦情や相談にどう回答するのか、指導等の権限が与えられるのかといった具体像は一切明らかになっていません。現時点では国の音頭に従って各都道府県にて白紙状態からあれこれと模索している状況のようですが、本年末ころには予算措置の概況が明らかとなり、設置に向けての動きが急加速する見込みです。

窓口の中立性

  二次医療圏ごとに相談窓口を設けるには、各都道府県がそれぞれ10個前後の窓口を設置することになりますが、各都道府県が独自に十分な資質のある相談担当職員を配備することは非常に困難と予想されます。おそらく各都道府県では、専門的知識を有する相談員を確保するために、地元医師会に協力を仰ぐだろうと予想されます。しかし医師会は賠償責任保険の運営主体としての一方当事者性を有しています。地元医師会関係者が苦情の対象とされることも多いはずです。設置される相談窓口の中立性確保については慎重な配慮が不可欠です。

  各地研究会・弁護団単位で地元都道府県の担当者と早期に意見交換の機会を持つことでどのような窓口が設置されるのか注意深く見守るとともに、医療事故に関する相談については各地研究会・弁護団の窓口が受け皿となりうるよう、さらなる体制強化を図る必要があると思われます。


※医療安全推進総合対策のURL

http://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0110/tp1030-1y.html