「地元完結型」交流からの脱皮~「相互乗り入れ」方式への転換は急務

弁護士堀康司(常任理事)(2002年12月センターニュース177号情報センター日誌より)

地域内交流は35の地裁へ拡大

   各地裁における今年度の医療訴訟ガイダンス・連絡協議会開催状況(平成14年11月22日現在。実施予定も含む)は以下のとおりであることが判明しました。

<ガイダンス>

釧路、秋田、盛岡、前橋、東京、横浜、静岡、名古屋、金沢、大阪、神戸、和歌山、岡山、広島、鳥取、松江、高知、松山、福岡、大分(20カ所)

<連絡協議会>

札幌(+函館が共催)、旭川(+釧路が参加)、青森、仙台、宇都宮、さいたま、千葉、東京、甲府、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、山口、高松、徳島、福岡、鹿児島(19カ所21地裁)

 

従って今年度末までには少なくとも35の地裁が地元医療界との接点を持つことになります。

地元完結型に対する医療界側の抵抗感

  このように各地裁単位で法曹界と医療界との連携をはかる動きは一気に広がりつつありますが、現状では各地裁間で連携をはかる動きは見られません。

  名古屋で実施されたガイダンスでは、大学病院側から「医療界の封建性が鑑定意見を述べにくくさせている」「近隣病院の事件を鑑定することには抵抗感がある」「被告病院名を知ってしまうとどうしてもバイアスがかかってしまうので、被告名を匿名化した形で鑑定を依頼してもらえれば中立な意見を言えるのだが」というような声が聞かれました。同様の意見は各地の連絡協議会でも報告されています。

相互乗り入れ開始は急務~高裁、最高裁は積極的にアレンジを

  すでに全国の地裁の7割が地域内連携を開始していますので、各地裁が相互に連絡を取り合うことによって、医療界が指摘する地元完結型への抵抗感を解消することは可能です。地元完結型から脱皮することは裁判所の中立公平性に関する疑念の払拭にもつながります。より幅広い地域から多様な鑑定人の選定を可能とする「相互乗り入れ方式」の実現にむけて、各高裁や最高裁は各地裁相互の連携を積極的にアレンジすべきです。