医療事故頻度研究の本格調査が開始

弁護士堀康司(常任理事)(2004年5月センターニュース194号情報センター日誌より)

第2回運営検討委員会を開催

  本年3月19日、都内において「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」(平成15年度厚生労働科学研究)の第2回運営検討委員会が開催されました。日本版ハーバードスタディともいえるこの研究については189号(2003年9月号)の本欄でも触れましたが、今回の運営検討委員会では、ここまでに行われたパイロットスタディと予備調査の経過が報告されました。

パイロットスタディと予備調査の概要

  同研究では、昨年10月からまずパイロットスタディが行われました。これは調査手法の妥当性と信頼性を検討するために、某2病院における平成15年度の退院患者のカルテ(除く精神科)と、同年度にアクシデントリポートが提出された入院症例のカルテを、それぞれ各100冊ずつ(合計200冊)無作為に抽出し、看護師2名が評価シートに基づいて独立に評価してその結果を比較した上で、医師がこれら200冊のカルテを閲覧して看護師による評価の信頼性を検討するとの方法で行われました。また、この結果を院内アクシデントリポートとも照合することによって調査方法全体の妥当性が検討されました。

  このパイロットスタディに引き続いて、昨年12月からは予備調査が行われました。これは調査手法の実施可能性を検証するためのもので、某5病院における平成15年度の退院患者のカルテ(除く精神科)各100冊(合計500冊)を無作為抽出し、可能であればこれらカルテのアクシデントレポートをも閲覧することとされました。これら資料について看護師2名が評価シートに基づく評価を行い、この評価結果に基づいて医師が有害事象の有無と予防可能性を判断する方法で実施されました。

700冊の検討結果は?

  これらの調査結果は各年度末に報告書として公表されるようですが、今回の運営委員会の席上では、パイロットスタディと予備調査で対象とされた診療録合計700冊の中に76件(10.9%)の有害事象が把握され、うち23.7%は予防可能性が高かったと評価されたことが報告されました。

  また、76件中、明らかな誤りによるとされたものは0%でしたが、60.5%が医療行為や管理上の問題によるものであるとされ、また30.3%は医療行為や管理上の問題によるものである可能性が高いとされています。

  正式調査前の暫定的数字ではありますが、退院患者の1割以上に何らかの有害事象が生じていることを推測させる結果となったことは、やはり我が国においても医療の安全確保が急務であることがあらためて示されたといえます。

いよいよ本格調査がスタート

  ここまでの成果をふまえて判定基準等を改訂の上、いよいよこの4月から2カ年計画で、30病院で無作為抽出された各250冊(合計7500冊)のカルテを対象とした本格調査がスタートしました。

  この調査からは、国内における医療安全の「病状」の程度が明らかにされることとなりますので、医療事故情報センターでも引き続き注目していきたいと考えています。