平成15年の医療過誤訴訟の概況~最高裁の統計より

弁護士堀康司(常任理事)(2004年7月センターニュース196号情報センター日誌より)


最高裁から発表された平成15年の医事関係訴訟統計の概要は次のとおりです。

新規提訴はさらに増加

 平成15年(1月~12月)の新受件数は987件で、過去最高だった昨年(906件)を今年も上回りました。提訴件数増加の勢いはまだまだ衰えを見せていません。

既済件数が1,000件台へ大幅増、未済事件数は減少へ?

 今年の統計で最も目立ったのは、既済件数が昨年に引き続いて大幅に増加し、ついに

1,000件の大台を突破するとともに、新受件数を上回るに至った点です(平成13年:722件→平成14年:869件→平成15年:1,035件)。

  このため、平成14年には2,063件であった未済件数は、2,015件に微減しました。未済件数は過去10年以上にわたって一貫して著しい増加傾向にありましたので、事件の滞留にようやく歯止めがかかったと言えるでしょう。

平均審理期間は27.7ヶ月

  平成12年以降、審理期間の短縮化傾向は顕著でしたが、今年もその傾向は変わらず、平均審理期間はついに27.7ヶ月(前年比-3.1ヶ月)となりました。

判決は年400件を超す

 平成15年の既済987件中、判決で終了したものは406件(39.2%)、和解で終了したものは508件(49.1%)で、比率的には判決の比率が例年より若干下がりましたが、実数では判決数、和解件数とも過去最高となっています。

  判決で終わったもののうち、勝訴率(一部勝訴を含む)は44.1%(平成14年:38.6%)で、若干の回復を見せましたが、通常事件の勝訴率が85.2%(人証実施事件については68.7%)であることに照らせばなお低い値に留まっています。

産婦人科、歯科は増加傾向?

  診療科目別の新受件数は、総数1,019件(=複数科目該当事案あり)中、内科(258件)、外科(214件)、産婦人科(137件)、整形・形成外科(129件)、歯科(70件)などとなっています。昨年と比較すると、産婦人科の件数が増加して整形・形成外科の順位が入れ替わった点、歯科の件数がのびている点(平成13年:49件→平成14年:60件→平成15年:70件)が目に付きました。