医療関連死の死因究明を行うモデル事業実施へ-厚労省平成17年度予算概算要求-

弁護士園田理(常任理事)(2004年10月センターニュース199号情報センター日誌より)

死因究明モデル事業の実施へ

  厚生労働省が、去る8月末に提出した平成17年度予算概算要求の中に、医療安全対策事業の一つとして、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業を新たに行っていく旨盛り込んでいます。具体的には、医療機関から診療行為に関連した死亡等の調査依頼を受け付け、法医学者・病理学者合同で解剖を実施するとともに、専門医による事案調査も実施し、それらの結果に基づき、因果関係及び再発防止策を総合的に検討するモデル事業を行っていくとのことです。

これまでの医療安全対策 -医療事故情報の収集-

  これまで厚労省は、医療安全対策事業として、ヒヤリ・ハット事例を収集し、それを基に医療事故につながりうる要因などを分析し、その結果を提供する、医療安全対策ネットワーク整備事業を行って来ました。この事業は平成13年10月から始められ、当初は対象が大学病院や国立病院などに限られていたものの、今年度からは対象を全医療機関に拡大して行われています(ただし任意参加)。また、現在厚労省では、大学病院や国立病院などに重大な事故事例情報の提出を義務付ける医療法施行規則一部改正省令案の検討を行っており(提出を義務付ける事故事例情報の範囲については、本誌・190の嘱託日誌を参照ください)、この改正が実現すれば、ヒヤリ・ハット事例に止まらず、重大な事故事例情報も収集されることになります。

  このように、これまでは、医療事故情報の収集事業は実施されて来ていましたが、個別事案につき専門家の助力を得て事故原因の科学的な調査・究明を行い、それを事故再発防止に役立てるといった取り組みはなされて来ていませんでした。今回の概算要求では、まさにそのような取り組みをモデル事業として進めていくとされたものです。これまで専門性・密室性の壁に阻まれて単に「不審な死」で終わってしまっていた医療関連死の真相が少しでも究明されることが期待されます。

所 感

  概算要求を見る限り死因等の調査依頼をなしうるのは医療機関に限られていますが、報道では、患者の遺族も医療機関を通じて調査依頼を行うことができるとのことでした。「再発防止策を総合的に検討する」ためには、患者遺族からも広く調査依頼を受け付けるべきで、真相解明を望む遺族の意向が医療機関によって無視されたり拒否されたりすることのないよう配慮がなされることを希望します。