厚労省検討会へ意見書提出-看護師助産問題の動向-

弁護士園田理(常任理事)(2005年12月センターニュース213号情報センター日誌より)

厚労省検討会へ意見書提出

  当センターは、去る10月27日付けで、医療過誤問題研究会、医療問題弁護団と連名で、厚生労働省の「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」に対し意見書を提出致しました。

意見書提出の経緯

  この検討会は、患者の視点に立ち安心安全な医療を確保するとの観点から、看護職員に関する複数の重要検討課題について一定の方向性を出し、社会保障審議会医療部会の取りまとめに役立てるために本年4月より設けられたものですが、検討事項の一つには「産科における看護師等の業務」が挙げられていました。

  この検討事項は、昨年10月に日本産婦人科医会が厚労省医政局長宛に出した要望書に端を発し、当センターが昨年11月に厚生労働大臣宛意見書を、本年5月に同医会宛申入書をそれぞれ出していた、看護師による産婦への内診実施を認めるべきか否かという問題が念頭に置かれたものでした(前者意見書提出経緯につき当ニュース平成17年1月号本欄を参照ください)。

  そして、検討会では、去る9月5日開催の第9回会合で上記事項につき検討がなされ、その際日本産婦人科医会から検討会に同日付けで、看護師に産婦内診を許容するのが必要であり、現行法解釈上も可能だという趣旨の意見書が提出されました。

  当センターは、分娩に関わる母子の安全を図るためには保健師助産師看護師法の正しい解釈とその遵守徹底が必要だとの立場から、これまでこの問題に関わって参りましたが、検討会において誤った現行法解釈論や立法論が取りまとめられることのないよう、この度、2つの弁護団と共同で検討会宛に急ぎ意見書を提出するに至ったものであります。

意見書の概要

 今回提出した意見書では、

 1)産婦の内診が、多数の診察項目から得られる多様な情報を総合的に分析して分娩進行の正常・異常を判断する高度な診察行為で、医師の指示の下でも看護師に実施させることが許されない絶対的医行為に該当すると解すべきこと

2)立法論的にも、看護師に産婦内診を許容する方向での法改正は、母児の安全という見地から妥当でないこと

3)助産師の就業促進等をこれまで以上に推進し、看護師による内診実施という違法な医療慣行を早急に改めるよう強く指導を行うことが、国としての正しい施策であること

 以上を理由を付して明らかにしました。

安心安全な医療という視点からの検討を

  日本看護協会や日本助産師会から検討会に参加している委員や、市民団体「陣痛促進剤による被害を考える会」からも、相次いで上記意見書と同旨の意見書が検討会宛に提出されるに至っています。

  患者の視点に立ち安心安全な医療を確保するとの観点から問題を検討することが検討会の設置目的です。この設置目的に沿った検討が改めて強く求められていると言えます。