弁護士園田理(常任理事)(2008年1月センターニュース238号情報センター日誌より)
全国一斉相談受付とは
平成19年12月8日、医療事故全国一斉相談受付が行われました。
この全国一斉相談受付は、・医療事故被害の実情を把握する、・医療被害者の法的救済を図る、・医療事故に関する社会の関心を高める、などを目的として、当センターが全国各地の医療問題弁護団・研究会、弁護士グループ等に呼び掛け、その協力を得て2年毎に実施されてきました。初めて実施されたのが平成3年10月。平成19年で9回目です。当センターは、この全国一斉相談受付の呼び掛けや、相談結果の集計などを事業の重要な一つとして行ってきました。
事前広報が重要
今回(第9回)の全国一斉相談受付の相談件数は、集計の結果、合計419件でした。
第1回から今回までの相談件数の推移と、最高裁から発表されている医事関係訴訟の新受件数(地裁で新たに提訴された件数)の推移とを重ね合わせたグラフは、次のとおりです。
全国一斉相談受付の件数が、年によって非常にバラツキがあるのが分かります。相談件数の多寡は、医療事故被害の実情やそれに対する社会の関心などを反映するというより、マスコミなどを通じた事前の広報の程度に左右されてしまう面が大きいようです。
今回、私も愛知県の医療過誤問題研究会の一員として午前中2時間だけ相談を担当させていただきましたが、私に回ってきた相談電話は1件のみ。その内容も、必ずしも純粋な医療事故とは言えないものでした(ただ、全く相談がなかったわけではありません。私より修習期の若い弁護士が率先して(?)相談電話を取ってくれていたのです)。
それでも、最終的に愛知県の窓口には、計41件の相談が寄せられました。昼の時間帯にTVでニュース報道され、午後、相談件数が増えたようです。全国では静岡県の44件に次ぐ件数でした。やはりマスコミ報道の影響は大きいようです。
第10回へ向けて
このように、相談件数自体は、事前の広報の程度に大きく左右されてしまうようで、これによって医療事故被害の実情を把握するには限界があります。平成3年当時と比べ、医療事故に関する社会の関心も随分高くなったのではないかと思います。
しかし、だからといって全国一斉相談受付の意義が失われるわけではありません。
医療事故被害に遭いながら、適切な相談窓口を知らず、きちんとした法的救済を受けられずに事実上泣き寝入りしてしまっている被害者の方はまだまだ多いのではないでしょうか。また、この全国一斉相談受付が、全国に患者側弁護士のネットワークを構築し、維持継続していく上で、貴重な機会になっている面もあります。
2年後は第10回記念(?)の全国一斉相談受付となります。事前の広報をどのように行えば効果的なのか。要検討です。