鑑定実施率に地域差~高裁管内別統計値より

弁護士堀康司(常任理事)(2008年4月センターニュース241号情報センター日誌より)

高裁管内別統計値

  そろそろ平成19年度の医事関係訴訟統計が明らかにされる時期が近づいてきましたが、平成18年度の同統計の高裁管内別数値が明らかにされましたので、以下にご紹介します(数字はいずれも概数)。

新受件数

  各高裁管内別の平成18年度の新受件数は、図1のとおりです。

  この数字から算出した高裁管内別の新受事件比率は図2のとおりです。

  このように、東京高裁管内が全体の4割超、大阪高裁管内が2割超となっており、両高裁で全国の3分の2を占めていることがわかります。

既済事件数と鑑定実施率

  図3は、各高裁管内の平成18年度の既済事件数と既済事件のうち鑑定を実施したものの実数を示しています。この図からは、既済事件数・鑑定実施事件数とも、東京、大阪の順で多いことがわかります。

  図3の数字から、高裁管内別の鑑定実施率(既済事件総数の中に鑑定実施事件が占める割合)を計算すると、図4のとおりとなります。

  この図からは、広島・高松両高裁管内における鑑定実施率が顕著に高くなっていることがわかります。他の地域における鑑定実施率は、10%台で横並びとなっており、それほどばらつきはありませんので、中国四国地方の鑑定実施率の高さには、有意差があるように思われます。

訴訟進行に地域差?

  いわゆる集中部型の審理方式の下では、争点整理を裁判所が積極的に進める結果として、鑑定の必要な事件と不要な事件の仕分けが進み、鑑定実施率が下がる傾向にあるようです。鑑定実施率の地域差は、裁判所が医療過誤事件に臨む際の積極性や意欲の度合いを反映したものである可能性も考えられます。

  これまで高裁管内別の統計値に接することはほとんどありませんでしたので、今回の数字は、地域ごとの医療過誤訴訟の姿を知る上で、非常に貴重な資料と言えます。今のところ単年度の資料しか得られていませんが、今後、こうした傾向が永続的なものであるのかどうか、分析を続けていきたいと思います。

※図1~4はこちらをご参照ください
080401センターニュースNo.241.pdf
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