評価機構内に運営組織発足~産科医療無過失補償制度

弁護士園田理(常任理事)(2008年5月センターニュース242号情報センター日誌より)

運営組織発足

  産科医療における無過失補償制度について、4月1日、(財)日本医療機能評価機構内に「産科医療補償制度運営部」が設けられ、同制度の運営組織が発足しました。

  去る1月23日付けで産科医療補償制度運営組織準備委員会の報告書が提出され、制度の骨格がまとまったところでしたが(報告書や制度の概要については、3月号の本欄を参照ください)、本年度内の制度創設に向けて、要となる組織が立ち上がったというところです。


事務局体制

  評価機構内の上記運営部の中には、事務局として次の3チームが設けられ、次のとおり制度運営に関する事務を分担することになっています。

・総合調整チーム:制度全般の企画調整・運営統括、会計管理、庶務、広報等に関する事務

・審査チーム:補償対象の判定のための審査に関する事務

・安全対策チーム:事例の原因分析、再発防止に関する事務

 3チームのうち、総合調整チームはこの4月から業務を開始していますが、審査チーム、安全対策チームの業務開始は、制度創設後になります。


原因分析、再発防止の体制は?

  医療事故の被害者、家族は、単に経済的負担の補償だけを望んでいるのではなく、事故の原因が十分な調査により究明され、再発防止のための取組みが行われることによって、医療の安全性が確保され、同様の苦しみを負う患者や家族がいなくなることを心から願っています。1月23日付け報告書でも、事故原因の分析を行い同種事故の防止に資する情報の提供を、経済的負担の補償と並ぶ制度目的と位置付けています。

  ところが、原因分析、再発防止に関わる様々な事務を取り扱う安全対策チームに配属される職員数は、当初、わずか7名だとのことです。

  制度創設当初は控えに人員を配置したということがあるのかもしれません。本制度における運営組織としての収入は、分娩機関から支払われる保険料(その中に運営組織分の事務手数料等が含まれる)に依存していますが、分娩機関の保険加入が強制ではないため、加入率が完全に予測できない面も確かにあります。

  しかし、もともと本制度は、日本医師会が創設を提案したことに端を発しています。1月23日付け報告書でも原則としてすべての分娩機関が本制度に加入する必要があると謳っています。制度創設当初から少なくとも6~7割の加入率が見込まれているようです。そうすると、1月23日付け報告書の推計によれば、制度創設当初から、1ヶ月当たり30~40人程度の補償対象者について、原因分析等を行う必要が出てきます。事務局職員が7名で果たして十分でしょうか。原因分析委員会、再発防止委員会の委員がそれぞれ何名選任されるのかはこれから決まりますが、形だけの原因分析、再発防止に止まるのではないかとの懸念が、次第に現実味を帯びてきています。

  評価機構には、事務局体制を含めた人的体制の充実・拡充を是非検討いただきたいと思います。