死因調査分析モデル事業の現状と問題点

弁護士園田理(常任理事)(2009年5月センターニュース254号情報センター日誌より)

モデル事業の公表資料

 診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業(「モデル事業」)が、厚労省補助事業として平成17年9月より行われています。

  モデル事業の実施状況については、厚労省の第17回死因究明等検討会(平成20年12月1日開催)で報告された平成20年11月17日現在の状況を、当ニュース本年2月号の本欄で紹介したところですが、その後の平成21年2月16日現在の状況が、同月24日に開催されたモデル事業の第20回運営委員会で資料として配布されています(詳細はモデル事業のホームページを参照ください)。

受付事例数

 配布資料によりますと、平成17年9月1日から平成21年2月16日までの3年5ヶ月余りの間にモデル事業が受け付けた事例数、受付に至らなかった相談事例数は以下のとおりです(括弧内は受付に至らなかった相談事例数の中で占める割合(%))。

  平成20年11月以降、平成21年2月までの3ヶ月間では、全国10地域で、受付事例数がわずか3件、受付に至らなかった相談事例数もわずかに4件。依然、事例数が非常に少ない状況です。いかに遺族の同意や医療機関の協力を得て事例数を増やしていくかが課題です。

事例数の地域格差

 また、配布資料の中の「地域別受付件数の概況」を基に、当ニュース本年2月号の本欄掲載の表と同様の計算方法により、人口100万人当たりの1ヶ月間の受付事例数や総相談事例数(受付事例数と受付に至らなかった相談事例数の合計数)を計算することができます。計算すると下記のような結果となります(受付事例数、総相談事例数とも、人口100万人当たりで1ヶ月当たりの数値。括弧内は愛知の値を1とした場合のその他地域の倍率。モデル事業が開始されて間もなく、受付事例等のない宮城と岡山を除く)。

  受付事例数、総相談事例数とも、愛知が最も少なく、受付事例数について札幌との間で7.4倍の格差が、総相談事例数について兵庫との間で17.9倍の格差が、それぞれあります。このような地域格差が生じる原因も究明する必要があります。

説明会後の遺族の状況

  モデル事業では、診療行為と死亡との因果関係について地域評価委員会が作成した評価結果報告書の内容に関し、遺族と医療機関に対し説明会が行われます。この説明会を終了した事例の遺族のその後の状況を調査した結果も、前記配布資料中に含まれています。

  配布資料によれば、説明会を終えた60事例のうち調査できた55事例の状況は次のとおりとのことです(+は診療行為に不満ある状態、-は不満のない状態)。

  また、説明会後に+(不満あり)の上記27事例は、次のような状況とのことです。

  説明会後に不満を残しても、トラブルが民事裁判にまで発展するケース(発展可能性あるもの含む)は14%に止まり、その多くはトラブル等に発展しないか、示談・和解が成立して紛争解決に至っています。ただ、説明会後に遺族の不満が解消される割合が半数に満たず38%程度に止まっているのは、遺族への対応や説明に不十分な点があるのではないかと思います。より一層の配慮が求められます。