医療機関HPガイドライン

弁護士松山健(嘱託)(2012年9月センターニュース294号情報センター日誌より)

  厚労省「医療情報の提供のあり方等に関する検討会」が「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)(案)」(以下、「ガイドライン」。ホームページは「HP」と略記)を準備し、厚労省は近々告示を予定していますので、要旨をご紹介します。

ガイドライン策定の背景

 医療は、人の生命・身体に関わり、不当広告により受け手が誘引されて不適当なサービスを受けた場合の被害が顕著であり、また、高度の専門性ゆえに、受け手側はサービスの質を広告から判断することが非常に困難であることから、医療法は限定的に認められた事項以外は原則的に広告を禁止しています。

  一方、インターネットによる情報発信・入手が一般化した現在、HPは国民・患者にとって医療機関選択のための貴重な情報源として機能している反面、特に美容整形、インプラント治療等自由診療を中心として、HP上の患者を誘引するための行き過ぎた表現や費用についての誤解を招く表示等が元でトラブルが多発し、厚労省は、消費者庁、国民生活センター等からHP上の不適切表示等に対する適切な対応を求められてきました。検討会は、HPが有用な情報源となっていることを踏まえ、HPは医療法上の広告にはあたらないとの従来の解釈は維持しつつも、ガイドラインでHPに掲載すべきでない事項と掲載すべき事項を示すことによって、HP上の適正な情報提供を図ることを目指します。

ガイドラインの対象

  対象は、インターネット上の「医療機関」のHP全般です。もっとも、美容整形、審美歯科、矯正治療等の自由診療を念頭に置いているのに、この表記では、かえって保険適用外の医療機関が該当しないとの誤解を招きかねないとして国民への周知の面での懸念も検討会では委員から示されています。

  対象となるのは医療機関の「ホームページ」であり、医師個人のブログ等は対象となりませんが、医療機関のHPにリンクが張られる等医療機関HPと一体的に運用されている場合はガイドラインの対象となり得るとされます。

  なお、ガイドラインは、バナー広告や検索サイトによる検索結果などに連動して表示されるスポンサー等に関する情報等については、「医療広告ガイドライン」の示す①誘因性(患者の受診等を誘引する意図があること)、②特定性(医療機関の特定が可能であること)及び③認知性(一般人が認知できる状態にあること)の三要件を充たす限り、医療法の規制対象となる広告として取り扱うとします。

HPに掲載すべきでない事項

(1)内容が虚偽にわたる、又は客観的事実であることを証明することができない事項(例)「当院では絶対安全な手術を提供しています」「○○%の満足度」

(2)他との比較等により自らの優位性を示そうとする事項(例)「○○治療では日本有数の実績を有する病院です」「芸能プロダクションと提携しています」

(3)内容が誇大なもの及び医療機関にとって都合が良い情報等の過度な強調 

 【1】任意の専門資格、施設認定等の誇張または過度の強調(例)「○○学会認定医」(活動実態のない団体による認定)

 【2】手術・処置等の効果・有効性を強調するもの (例)加工修正した術前術後の写真

 【3】医療機関にとって便益を与える体験談の強調

 【4】提供される医療の内容とは直接関係のない事項による誘引 (例)「無料相談された方にもれなく○○をプレゼント」

(4)早急な受診を過度にあおる表現や、費用の過度な強調 (例)「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」

(5)科学的な根拠が乏しい情報に基づき、国民・患者の不安を過度にあおるなどして、医療機関への受診や特定の手術・処置等の実施を不当に誘導するもの (例)「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください」

(6)公序良俗に反するもの

(7)医療法以外の法令で禁止されるもの

HPに掲載すべき事項(自由診療に限る)

(1)通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項

(2)治療等のリスク、副作用等に関する事項


  自由診療は、保険診療と異なり、内容や費用が医療機関毎に大きく異なり得ること、利点や長所のみ強調されると受診する者が適切な選択をなし得なくなることから、自由診療に限って掲載すべき事項が定められています。

まとめ

 ガイドラインは、関係団体の自主的取り組みを促すもので、医療広告ガイドラインの三要件を充たさない限り、医療法に基づく規制ではありません。インターネットで検索すると、たくさんの美容整形のHPが存在し、そのほとんどが手術費65%オフキャンペーン等「掲載すべきでない事項」に該当する事項を掲載しています。厚労省は美容医療関係2団体との事前調整を終えているようですが、運用開始後のガイドラインの実効性いかんによっては法規制も含めた対応を検討することも必要であり、今後の運用を見守っていく必要があります。