専門医制度、中立的第三者機関設置へ

弁護士松山健(嘱託)(2013年9月センターニュース306号情報センター日誌より)


   厚生労働省「専門医の在り方に関する検討会」が新たな専門医制度を構築する上で第三者機関の設置を求める報告書(平成25年4月22日)を提示したことを受けて、平成25年8月6日(火)、第一回「日本専門医機構(仮称)」組織委員会が開催されました。

  参加団体は日本医学会、日本医師会、全国医学部長病院長会議、四病院団体協議会、日本専門医制度評価・認定機構です。組織委員会では、5つの委員会を設置し、本年11月を目途に「日本専門医機構(仮称)」の骨格を決定する事が確認されました。

  以下、4月の検討会の報告書の概要をご紹介します。

目 的

 従来、専門医の認定は、各学会が独自に運用し、認定基準の統一性や専門医の質の担保に懸念があったことを踏まえ、専門医としての能力についての医師と国民との捉え方のギャップや医師の地域偏在・診療科偏在の解消も視野に入れ、専門医の質を高め、良質な医療が提供されることを目的とするとします。

基本的な考え方

 新たな専門医の仕組みを、プロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)を基盤として設計し、国民の視点に立った上で、育成される側のキャリア形成支援の視点も重視して構築し、例えば、専門医を「それぞれの診療領域における適切な教育を受けて十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」と定義し、「神の手を持つ医師」や「スーパードクター」を意味するものではないことを明確化します。

中立的な第三者機関の設置

 専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行うための中立的な第三者機関を設置する、この第三者機関は、専門医の認定・更新基準や養成プログラム・研修施設の基準の作成を行い、専門医の質や分布等を把握するため、専門医等に関するデータベースを構築するとします。

専門医の領域

 基本的な診療領域を専門医制度の基本領域として、この基本領域の専門医を取得した上でサブスペシャルティ領域の専門医を取得するような二段階制の仕組みを基本とすべきとします。

総合診療専門医

 総合診療医には、日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と傷害等について、わが国の医療提供体制の中で、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供することが求められるとして、基本領域の専門医の一つとして「総合診療専門医」とし、総合診療専門医には、他の領域別専門医や他職種と連携して、多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供することが期待されるとします。

専門医の養成・認定・更新

○基本領域のいずれか1つの専門医を取得することが基本とします(自助努力により認定・更新基準を満たす限り、複数領域の取得は禁じないとします)。
○専門医の認定は、経験症例数等の活動実績を要件とし、また、専門医取得後の更新の際にも、各領域の活動実績を要件とするとします。
○広告制度(医師の専門性に関する資格名等の広告)を見直し、基本的に、第三者機関が認定する専門医を広告可能とします。

地域医療との関係

○専門医の養成は、第三者機関に認定された養成プログラムに基づき、大学病院等の基幹病院と地域の協力病院等(診療所を含む)が病院群を構成して実施し、養成プログラム作成に際しては、地域医療に配慮した病院群の設定や公的な支援を検討するとします。
○専門医の養成数は、患者数や研修体制等を踏まえ、地域の実情を総合的に勘案して設定し、少なくとも、現在以上に医師が偏在することのないよう、地域医療に十分配慮するとします。

既存の学会認定専門医からの移行

 質担保の観点から、第三者機関において適切な移行基準を作成し、移行の時期は第三者機関において速やかに検討するとします。

スケジュール

 新たな専門医の養成は、第三者機関における認定基準等の作成や、各研修施設における養成プログラムの作成を経て、平成29年度を目安に開始し、研修期間は、例えば3年間を基本とし、各領域の実情に応じ設定するとします。

まとめ

 学会ごとに乱立し統一基準がなく、クオリティ・シグナルとして十分に機能しない専門医制度の大枠がようやく定まったことは評価できます。ただし、養成プログラムや認定・更新基準の策定は容易ではありません。今後の制度の具体化を見守っていく必要があります。