医療事故調査の仕組み等に関する検討部会とりまとめに対し、提言を提出

弁護士園田理(常任理事)(2013年10月センターニュース307号情報センター日誌より)

提言を提出

 厚労省内の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」が去る5月29日に公表した「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」について(本年7月号の本欄でご紹介)、当センターは、去る8月23日付けで提言を提出しました。

提言の骨子

 当センター提言の骨子は以下のとおりです。

第三者機関の担うべき機能について

・第三者機関は、日本医療機能評価機構から医療事故情報収集等事業の移管を受け、医療事故情報を一元的に集約すべき。
・第三者機関は、医療機関から助言要請がなくとも助言・指導をなしうるとすべき。
・第三者機関は、院内事故調査への外部支援や連絡・調整を行う「支援法人・組織」の中立性・透明性・公正性・専門性を厳正に登録審査すべき。都道府県医師会は医師賠償責任保険の運営主体で、支援法人・組織としては不適格。
・第三者機関は、支援法人・組織から定期的に外部支援実施状況の報告を受け、不適切な点があれば、当該法人・組織に助言・指導をなしえ、場合により登録取消しができるとすべき。
・第三者機関は、個別事故ごとに適切な支援法人・組織を選択するものとすべき。
・第三者機関は、事故医療機関から再発防止策の実施状況や当該防止策の有効性検証結果を報告させ、事後的検証も担当すべき。
・第三者機関は、国・地方自治体・医療関係団体等に対する政策提言も担当すべき。

第三者機関への事例の届出について

・届出は法的義務とすべき。
・届出範囲は早急に拡大していくべき。
・当該事案発生を予期していても届出対象とするのが望ましい(ただし予期事案につき当初より調査まで法的義務とするかは考慮の余地あり)。少なくとも、死亡の可能性が完全に否定できなかったにすぎない事案や、死亡に至る主要経過を予期していなかった事案は、「当該事案の発生を予期しなかったもの」に当たるとすべき。
・「診療行為」や「行った医療又は管理」に不作為が含まれることを明記すべき。
・遺族からの届出も受け付けるべき。
・届出は事案発生から遅くとも24時間以内になされるよう義務付けるべき。

院内事故調査の中立性・透明性・公正性・専門性の確保について

・院内調査に外部医療専門家の関与が必須である旨ガイドラインにも明記すべき。
・院内調査委員会委員の過半数は外部委員であることを要するとすべき。
・院内調査委員会委員に医療以外の分野の外部専門家が広く選任されるものとし、とりわけ患者の視点を踏まえ意見を述べうる弁護士を原則として選任すべき。
・院内調査委員会委員長は外部委員が就任することにすべき。
・院内調査委員会委員への働きかけを禁止する規定をガイドラインに置くべき。
・院内調査に当たり遺族からの事情聴取を原則とすべき。
・院内調査開始と同時に遺族に診療記録の写しが交付されるべき。
・院内調査委員会の傍聴に関する遺族の希望は最大限尊重されるべき。
・院内調査結果の第三者機関への報告期限を定め、第三者機関は報告遅延事案につき必要な支援等を行い早期報告を促進すべき。

第三者機関による調査について

・第三者機関は、助言・指導を行っても調査方法等が適切に是正されない場合、院内調査の結果報告を待たず、自ら調査を行いうる余地を認めるべき。
・医療関係者以外の第三者(とりわけ患者の視点を踏まえ意見を述べうる弁護士)を委員に選任することが必要。
・遺族からの事情聴取、遺族への診療記録の写しの交付、遺族の傍聴は、院内調査に関する上述と同様にすべき。
・調査申請した遺族に調査費用を負担させるべきでない。仮に一部負担させるとしても、申請を萎縮させないよう十分な配慮が必要。

第三者機関の組織のあり方について

・第三者機関には、中央組織の下にブロック単位で地方組織を設置すべき。
・地方組織設置の際には、モデル事業の組織・人材を十分に活用すべき。

十分な予算措置と解剖制度

・国の十分な予算措置と、解剖を可能とする制度整備が必要。

よりよい医療事故調査制度構築へ向けて

 検討部会のとりまとめに対しては、日弁連も去る8月9日付けで会長声明を、医療問題弁護団も同月22日付けで意見書を、それぞれ提出しています。
 当センターの提言やこれら声明、意見書などが参考にされ、安全な医療を受ける患者の権利実現という観点から今後よりよい法改正やガイドライン制定がなされていくよう、引き続き国に訴えていく必要があります。