医療事故調査制度の創設を迎えて

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医療事故調査制度の創設を迎えて

2014/06/18
医療事故情報センター
理事長 弁護士 柴田 義朗

(連絡先)
名古屋市東区泉1-1-35 ハイエスト久屋6階
電話・052-951-1731 FAX・052-951-1732

 医療事故情報センターは、患者・家族の代理人として医療事故に関する事案を担当している全国の弁護士を正会員として構成されている団体です(1990年設立・2014年6月1日現在正会員数652名)。私たちは、長年にわたり、医療事故が繰り返され多くの患者や家族が悲惨な被害を受けるという現実を目の当たりにしてきました。

 本日、国会において医療法が改正され、平成27年10月1日より、医療法に基づく医療事故調査制度が創設されることが決まりました。

 全ての人には安全で質の高い医療を受ける権利があり、国はこの権利を保障するために、安全で質の高い医療を実現する責務を負っています。今回の法改正によって、ようやく、国がその責務を果たすための第一歩を踏み出すことになりました。特に、すべての医療機関が診療に関連した死亡事例を第三者機関に報告し、医療機関自らがその調査を実施することが法的に義務づけられた点は、高く評価しています。

 しかし、法は大きな枠組みを定めるにとどまり、その大半を今後制定される省令やガイドラインにゆだねています。いかなる省令やガイドラインが作成され、いかなる団体が第三者機関に指定されるかなどによって、本制度の内容や運用は大きく左右されることとなります。
 また、本制度は、医療界の自律性を前提とするものです。私たちは、1999年の都立広尾病院事故以降、事故を真摯に調査して医療の安全につなげようとする文化が、医療現場にゆっくりと芽吹きつつあることは感じてきました。しかしながら他方で、今もなお、医療界の自律性に信頼を置きかねると感じられるような事例に接することも少なくありません。これらの点については、附帯決議にも指摘されているところです。

 本制度を医療事故被害の再発防止という悲願に真に答える制度とするためには、今後の省令やガイドラインの策定、第三者機関の指定などに関する議論が、公開の場で行われ、市民や医療事故被害者の視点にたって制定されること、そして医療界が自律性をより高めていくことが必須であると考えます。