「病床機能報告制度」、始まる

弁護士松山健(嘱託)(2014年10月センターニュース319号情報センター日誌より)

多方面にわたる改正

 つい医療事故調査制度の創設にばかり目が行ってしまいますが、先般の「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(以下「改正法」)は、将来の地域医療の提供体制にかかわる多方面の改正が含まれています。
 そこで、以下では、改正法の概要と、平成26年10月から始まる病床機能報告制度についてご紹介します。

改正法の概要

1.新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)
①都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等)のため、消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置
②医療と介護の連携強化のため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定
2.地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
①医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)等を報告し、都道府県は、それをもとに地域医療構想(ビジョン:地域の医療提供体制の将来のあるべき姿)を医療計画において策定
②医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付け
3.地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)
①在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し、多様化(地域支援事業:介護保険財源で市町村が取り組む事業)
②特別養護老人ホームについて、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化
③低所得者の保険料軽減を拡充
④一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ(ただし、月額上限あり)
⑤低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加
4.その他
①診療の補助のうちの特定行為を明確化し、それを手順書により行う看護師の研修制度を新設
②医療事故調査制度
③医療法人社団と医療法人財団の合併、持分なし医療法人への移行促進策を措置
④介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を27年度から28年度に延期)

病床機能報告制度

 上記2.①の病床機能報告制度が、この10月から(改正医療法第30条の12)が始まり、11月14日まで(次年度以降は10月31日まで)医療機関からの報告を受け付けます。
 病床機能報告制度とは、一般病床・療養病床を有する病院・診療所が、当該病床において担っている医療機能の現状と今後の方向について、病棟単位で、「高度急性期機能」、「急性期機能」、「回復期機能」及び「慢性期機能」の4区分から1つを選択し、その他の具体的な報告事項とあわせて、全国共通サーバー(厚生労働省が民間会社に委託し整備し、委託業者が集計・確認等を行う)等を通じて都道府県に報告する仕組みです。
区分/内 容
高度急性期機能/急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、 診療密度が特に高い医療                          を提供する機能
急性期機能/急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能
回復期機能/○急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する                      機能
         ○特に、急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頚部骨折等の患者に対し、ADLの向                      上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能 (回復期リハ                      ビリテーション機能)
慢性期機能/○長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能
         ○長期にわたり療養が必要な重度の障害者(重度の意識障害者を含む)、筋ジストロフ                      ィー患者又は難病患者等を入院させる機能
 本報告の集計結果を基に各都道府県は地域医療構想(ビジョン)を策定し、更なる医療機能の分化・連携を推進し、この集計結果は医療法の規定に基づき、地域医療構想(ビジョン)のガイドラインの策定という目的に限って厚生労働省でも活用されるとのことです。

まとめ

 地域に必要な医療機能とは何かという観点からの検討に基づいて、一般病床の機能分化を明確化して、これにより急性期医療の人的資源の集中を図るために、病床機能の見える化が重要であるとして創設された本制度です。
 それだけに報告を受けて得た情報をもとに医療計画においてその地域にふさわしい地域医療のビジョンを策定するという各自治体の今後の継続的な取り組みを見守っていく必要があります。