事故調施行検討会、大詰めを迎える

弁護士松山健(嘱託)(2015年2月センターニュース323号情報センター日誌より)

施行に係る検討会

  平成27年1月14日、「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の第4回の会合が開かれました。検討会は、今後、2月5日の第5回、2月25日の第6回の計6回で終了する見込みです。

 厚労省のHPでは、各回の議事録と資料が公表されています。資料の中には、厚労省医療安全推進室による論点整理も公開され、論点ごとに、法律、省令(イメージ)、通知(イメージ)が示されていますので、ご覧いただければと思います。

調査委員会の設置に関する議論が不可欠

医療現場からの事故情報の適正な抽出がなされなければ、そもそも調査の俎上に乗ってこない以上、医療事故の定義や医療事故発生時の報告という間口の問題が極めて重要なのは言うまでもありませんが、こと調査の中身の段階について、厚労省の論点整理に論点としてあげられていない重要項目が数多く認められます。紙面の関係上、院内調査の主体に関して、事故調査委員会について取り上げたいと思います。まず医療法の法文を引用します。

法 文

「1 病院等の管理者は、医療事故が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、速やか

   にその原因を明らかにするために必要な調査(略)を行わなければならない。

 2 病院等の管理者は、医学医術に関する学術団体その他の厚生労働大臣が定める団体(略)に対

   し、医療事故調査を行うために必要な支援を求めるものとする。

 3 医療事故調査等支援団体は、前項の規定により支援を求められたときは、医療事故調査に必要

   な支援を行うものとする。」(医療法第6条の11)

院内調査の主体

 このように、法文上は、管理者が単独で調査することも支援団体に丸投げすることも可能な体裁となっています。

 しかし、厚労省の論点整理では、事故調査委員会の設置や委員の構成が論点としてあげられていません。

 従来から、院内調査の主体として事故調査委員会が想定され、その上で、公正な調査のために、その組織の中立性・公平性・透明性を確保するためにはどのような委員構成であるべきか(外部委員の比率や外部委員が議長となるべき等)ということが議論されてきたところです。

 それは、公正な調査の実現のためであることはもちろんのこと、消費者事故等他分野の事故では到底国民のコンセンサスが得られないはずの事故の一方当事者が主体となって自らの事故を調査するという方式を原則形態として採用する上で、被害者(及び被害者となり得る国民)の側から見て信頼される制度となる上で、第三者機関が調査主体となる場合に劣らない公正らしさの確保が不可欠という点に異論がなかったはずだからです。

 事故調査委員会の設置と中立公平性の担保される委員構成に関するガイドラインが定まることにより、事故の起こった医療機関や支援を求められた支援団体毎でのバラつきのない信頼できる調査主体の基準化がなされることが望まれます。

まとめ

 さて、国民的議論の活発化のないままに検討会は大詰めを迎えそうです。

 検討項目は多数に上りますが、今後、パブリックコメントの実施、省令の公布、省令・告示・通知事項についての指針の策定公表、第三者機関の申請受付開始・第三者機関の大臣指定と急ピッチで施行に向けて進んでいく中で、厳しく監視していくことが必要です。