検討会への患者側団体の意見・要望、相次ぐ~検討会の議論状況を憂慮

弁護士園田理(常任理事) (2015年3月センターニュース324号情報センター日誌より)

検討会の憂慮される議論状況

  「医療事故調査制度の施行に係る検討会」が大詰めです。本稿は、2月5日第5回が終わり、2月25日第6回開催前に執筆していますが、発行時には、第6回が終了し、取りまとめがされている予定です。
 医療事故の原因を究明して同種事故の再発防止を図り、医療の安全と質の向上を図るという医療事故調査制度の目的を実現していくには、医療事故調査が公正・中立・透明に行われる必要があります。
 しかし、検討会では、一部構成員により、「医療事故調査制度で医療崩壊を加速してはならない、調査範囲を限定し、現場に即して、非懲罰性・秘匿性を守って調査はなされるべき」といった意見が声高に主張されて来ています。そのような意見を裏付けるとして紹介された文献の引用等が客観性や科学性を欠き趣旨を曲解してなされていることについては、これまで本欄で指摘して来ているとおりです。このような意見は、医療事故調査制度の上記目的実現に反し、医療事故から「逃げる、隠す、誤魔化す」ことを事実上容認するものではないか、との懸念を拭い去れません。
 改正法による医療事故調査制度は大枠が定められたに止まり、大半が省令や通知などに委ねられています。省令や通知などを検討する検討会での議論が大詰めを迎え、上述のような議論状況に憂慮し、患者・遺族の団体や患者側弁護士団体が検討会に対し次々と意見・要望を述べています。

当センター

 当センターは、1月30日、医療事故調査制度の施行に係る意見書を公表しました(http://www.mmic-japan.net/2015/01/30/opinion/)。
 当センター意見書は、公正・中立・透明な医療事故制度により初めて制度目的が実現できるとの見地から、制度施行に当たり留意されるべき点について、検討会での議論事項・論点に即しつつ、本来論点として挙げられ、検討されるべき点まで含め、詳しく論じたものです。紙幅の関係上内容を詳しくご紹介できませんが、ぜひご一読ください。

医療過誤原告の会

 医療過誤裁判を検討・体験した被害者・遺族団体の医療過誤原告の会は、2月3日、意見書を提出しています。
 その内容は、検討会で度々発言される数名の構成員の意見が、国会での法案審議や参議院厚労委員会附帯決議の内容から乖離したもので、それが検討会でまとめられガイドライン策定に反映される危惧が強い、真摯に医療の質・安全向上に努力されてきた医療者とともに国民の期待に応えるガイドラインにまとめていただきたい、というものです。

医療問題弁護団

 東京を中心とした患者側弁護士団体の医療問題弁護団は、2月3日、意見書を公表しています(http://www.iryo-bengo.com/activity/1581)。
 その内容は、検討会で参考資料として配布され、一部構成員の意見の淵源ともなっている、日本医療法人協会「現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会最終報告書」が、医療事故調査制度の目的を実現しうるものでなく、法律、判例、制度制定までの検討経緯等に関し多々誤りが見られることについて、詳細に論証したものです。

ささえあい医療人権センターCOML

 患者・医療者が協働する医療の実現を目指して活動されているNPO法人ささえあい医療人権センターCOMLのブログ(http://coml-blog.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-1c63.html)でも、2月4日、検討会での議論が「医療への信頼が失墜する議論の展開」だとし、医療不信を拭い去り、成熟した医療を目指すには、医療事故調査に透明性と中立性の担保が何より必要で、患者側の医療への信頼を失墜させることのないよう前向きな制度にしていって欲しい、と強く訴えています。

患者側7団体共同の要望

 そして、患者側7団体(医療過誤原告の会、医療情報の公開・開示を求める市民の会、患者の視点で医療安全を考える連絡協議会、陣痛促進剤による被害を考える会、全国薬害被害者団体連絡協議会、富士見産婦人科病院被害者同盟、薬害・医療被害をなくすための厚労省交渉団)は、2月20日、要望書(http://homepage1.nifty.com/hkr/simin/ikensyo/jikocho-20150220.pdf)を提出しました。
 その内容は、医療事故調査制度の中立性・透明性・公正性の確保、事故の事実経過に関する事故直後の被害者遺族との情報共有、被害者・遺族への偏見や日本医療法人協会事故調ガイドラインに基づく制度設計の回避を要望するものです。

信頼される医療事故調査制度に

 医療事故調査制度が成立した趣旨、目的に立ち返り、上述のような医療事故被害者、患者・遺族側の意見・要望も十分汲み取って、公正・中立・透明で、国民に信頼される医療事故制度が施行されるように、検討会で取りまとめられることを、祈念してやみません。