医療法に基づく医療事故調査制度の運用開始にあたって
2015/10/01
医療事故情報センター
理事長 弁護士 柴田 義朗
名古屋市東区泉1-1-35 ハイエスト久屋6階
電話・052-951-1731 FAX・052-951-1732
http://www.mmic-japan.net/
本日より、医療法に基づく新しい医療事故調査制度の運用が始まりました。
患者・医療事故の被害者は、医療の安全を願い、長年にわたり、公正性・透明性・中立性・専門性の確保された事故調査の実現を求め、医療機関が自ら医療事故を調査するとともに、第三者機関が独立した立場から、調査の過程全体に対して適切に指導を行うという制度の創設を、希求し続けてきました。
新制度において、すべての医療機関に対し、診療に関連した死亡事例を医療事故調査・支援センター(調査・支援センター)に報告し、調査・支援センターと医療事故調査等支援団体(支援団体)からの支援を受けて、医療機関が自ら死亡事故の調査を実施することが義務付けられました。国が、安全で質の高い医療を実現する責務を果たすために、大きな一歩を踏み出したものと、私たちは評価しています。
しかしながら、新制度では、医療事故調査における第三者機関の役割が大きく後退しています。
このような新制度の下において、真に公正性・透明性・中立性・専門性の確保された事故調査を実現するためには、まず第一に、調査・支援センターが、国をはじめとするいかなる組織や団体からも独立し、透明性をもって運営されなければなりません。
同時に、支援団体による支援のあり方についても、公正性・透明性・中立性・専門性が確保されなければなりませんが、そのための方策は全く白紙の状態であるため、具体的な仕組みの検討を急ぐ必要があります。
また、報告すべき事故かどうか恣意的に判断されたり、医療機関や地域によって調査の内容や質に格差が生じたりすることのないように、事故の報告や調査は、調査・支援センターがガイドラインを作成して、適正に実施されるべきです。
そして、調査の結果は、客観性のある報告書という形にまとめられた上で遺族に交付されるとともに、再発防止を実現するための貴重な教訓が、調査・支援センターを通じて全国の医療現場に伝えられることが重要です。
新制度がこのように運営されるためには、すべての関係者に対し、運用開始後の実情を適切に把握しながら、よりよい制度へと不断の見直しを続ける努力が求められます。
また、患者、被害者はもちろん、国民すべてが、新制度の運用を注視し、制度の改善に
意見を述べることが必要です。私たちも引き続き、患者・被害者の視点に立ち、新制度の下で真に安全で質の高い医療が実現されることを目指して、真摯に努力を続けていきます。
【医療事故情報センター】
患者・家族の代理人として医療事故に取り組む全国の弁護士を正会員として構成される団体。
1990年に設立された後、医療事故の被害回復と再発防止のための活動を続けている。
2015年10月1日現在正会員数648名。
事務局所在地:名古屋市東区泉1-1-35 ハイエスト久屋6階
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