運用を注視し、よりよい制度への改善を!~医療事故調査制度の船出にあたり

弁護士園田理(常任理事) (2015年11月センターニュース332号情報センター日誌より)

当センターの声明-運用を注視し、よりよい制度への改善を!

 昨年6月の医療法改正で創設された医療事故調査制度の運用が、本年10月1日から始まりました。
 この制度運用開始にあたり、当センターは、同日、「医療法に基づく医療事故調査制度の運用開始にあたって」と題する声明を公表しました(http://www.mmic-japan.net/2015/10/01/opinion/)。
 当センターが行った声明の内容は、概略、次のとおりです。
○患者・医療事故の被害者は、長年、中立公正で透明な手続による、専門性の確保された医療事故調査制度の創設を求めて来た。今回一定の制度が創設され、運用が開始されたことは、大きな一歩を踏み出したもので、評価する。
○しかし、運用が開始された新制度では、医療事故調査に関わる第三者機関の役割が大きく後退しており、以下のような点が重要でそれらに留意し、運用開始後の実情を把握したり運用状況を注視したりしていく必要がある。そして、よりよい制度へと制度改善提言を行い、不断の見直しを行っていく必要がある。
・第三者機関である医療事故調査・支援センターの運営が、独立性や透明性を保ってなされていくか。
・支援団体による医療機関への支援が、具体的にどのような仕組みでなされていくか。事故調査の中立性、公正性、透明性、専門性が確保されるような形でなされていくか。
・医療機関によって事故報告するか否かに関し恣意的判断がなされたり、医療機関や地域ごとに事故調査の内容や質に関し格差が生じたりしないよう、調査・支援センターが、院内事故調査のガイドラインを作成するなど、必要な情報提供・支援を行っていくか。
・事故調査結果の遺族への説明が報告書という書面を交付する方法でなされていくか。
・調査・支援センターによる事故再発防止の普及啓発が適切になされていくか。
○われわれも引き続き、新制度の下で真に安全で質の高い医療が実現されるよう、患者・被害者の視点に立ち真摯に努力を続けていく。

患医連の声明-相談窓口を設置します!

 患者・医療事故の被害者の団体で構成される患医連(患者の視点で医療安全を考える連絡協議会)も、「医療事故調査制度の発足にあたって-医療事故被害者・遺族、医療従事者等からの相談窓口を設置します」と題して、おおよそ次のような声明を出しています(http://kan-iren.txt-nifty.com/)。
○長年にわたり医療事故調査を行う第三者機関創設を訴え、ようやく事故調査制度が施行されたが、多くの課題が残されており、この制度が信頼されるものになっていくかは、医療界・医療者の真摯な取組み如何にかかっている。
○第一の課題は、事故調査を開始するか否かが医療機関の管理者の判断次第になっている点である。患者遺族や医療機関の医療従事者・職員が、医療機関の管理者による事故調査しないとの判断やその説明を理解したり納得したりすることができない場合に、そのことを相談できる窓口を医療事故調査・支援センターに設ける必要があり、そのことを要請してきたが、現在まで認められていない。これが認められるまで、患医連は、参加団体に、上記相談ができる相談窓口を設け、相談者に助言できるようにすることとした。
○被害者・遺族は、次の3点に注目し、医療機関が事故調査に関し適切な対応をしているか見極める必要がある。
①事故発生直後の遺族への情報提供、遺族への事実経過の十分な確認と情報共有化
②遺族への解剖の重要性・意義の説明による解剖実施の努力
③事故調査報告書の遺族への交付と丁寧な説明
○今後も新しい事故調査制度を国民の皆さんに知ってもらうための活動を続けていく。真剣に医療安全・医療事故調査に取り組んでいる医療機関の支援を続けていく。医療機関による事故調査が「専門性、中立・公正性、透明性」を備え、真の原因究明、再発防止につながるか見守り続けたい。

制度運用状況に関心を持ち、注目を!

 以上のような当センターや患医連の声明も念頭に置いて、今後の医療事故調査制度の運用状況に関心を持ち、注目していきましょう。