医療事故調査制度運用改善の具体的内容が明らかに

松山 健(嘱託) (2016年8月センターニュース341号情報センター日誌より)

医療法施行規則の一部を改正する省令、施行される

 先月号の本欄で医療法施行規則改正案についてご報告しましたが、予定通り医療法施行規則の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第117号)と省令施行に伴う留意事項についての通知(医政発0624第1号)が平成28年6月24日付で公布・発出されました。

省 令

 (医療事故調査等支援団体による協議会の設置関係)
1 法第6条の11第2項に規定する医療事故調査等支援団体は、同条第3項の規定による支援を行うに当たり必要な対策を推進するため、共同で協議会を組織することができるものとすること。
2 協議会は、1の目的を達するため、病院等の管理者が行う法第6条の10第1項の報告及び医療事故調査の状況並びに支援団体が行う支援の状況の情報の共有及び必要な意見の交換を行うものとすること。
3 協議会は、2の情報の共有及び意見の交換の結果に基づき、以下の事項を行うものとすること。
(1) 病院等の管理者が行う法第6条の10第1項の報告及び医療事故調査並びに支援団体が行う支援の円滑な実施のための研修の実施
(2) 病院等の管理者に対する支援団体の紹介
 (病院等の管理者が行う医療事故の報告関係)
 病院等の管理者は、法第6条の10第1項の規定による報告を適切に行うため、当該病院等における死亡及び死産の確実な把握のための体制を確保するものとすること。

 

通 知

 厚労省医政局総務課長から各都道府県医務主管部(局)長宛の通知では、次のような留意事項が示されています。
 (支援団体等連絡協議会について)
1 協議会は、地域における支援の体制を構築するために各都道府県の区域を基本として各1か所の地方組織としての支援団体等連絡協議会(「地方協議会」)を、また、全国に1か所の中央組織としての支援団体等連絡協議会(「中央協議会」)を設置することが望ましい。
2 地方協議会には、当該都道府県に所在する医療事故調査等支援団体が、中央協議会には、医療事故調査・支援センターが参画する。
3 医療事故調査を行うために必要な支援について、迅速で充実した情報の共有及び意見の交換を円滑かつ容易に実施できるよう、専門的事項や個別的、具体的事項の情報の共有及び意見の交換などに際しては、各支援団体等連絡協議会が、より機動的な運用を行うために必要な組織を設けることが考えられる。
4 各支援団体等連絡協議会は、病院等の管理者が医療事故に該当するか否かの判断や医療事故調査等を行う場合に参考とすることができる標準的な取扱いについて意見の交換を行う。
5 病院等の管理者が行う報告及び医療事故調査並びに支援団体が行う支援の円滑な実施のための研修は、地方協議会又は中央協議会が、それぞれ病院等の管理者及び当該病院等で医療事故調査に関する業務に携わる者並びに支援団体の関係者に対して実施する。
6 改正省令の「病院等の管理者に対する支援団体の紹介」とは、地方協議会が、各都道府県内の支援団体の支援窓口となり、医療法上の報告を行った病院等の管理者からの求めに応じて、個別の事例に応じた適切な支援を行うことができる支援団体を紹介することをいう。
(医療事故調査・支援センターについて)
1 医療事故調査・支援センターは、中央協議会に参画する。
2 医療事故調査・支援センターは、医療事故調査制度の円滑な運用に資するため、支援団体や病院等に対し情報の提供及び支援を行うとともに、医療事故調査等に係る優良事例の共有を行う。
3 医療事故調査・支援センターは、研修を支援団体等連絡協議会と連携して実施する。
4 遺族等からの相談に対する対応の改善を図るため、また、当該相談は病院等が行う院内調査等への重要な資料となることから、医療事故調査・支援センターに対して遺族等から相談があった場合、医療安全支援センターを紹介するほか、遺族等からの求めに応じて、相談の内容等を病院等の管理者に伝達する。
5 医療事故調査・支援センターは、医療事故調査報告書の分析等に基づく再発防止策の検討を充実させるため、病院等の管理者の同意を得て、必要に応じて、医療事故調査報告書の内容に関する確認・照会等を行う(なお、医療事故調査・支援センターからの確認・照会等に対し、当該病院等の管理者は医療事故調査報告書の再提出及び遺族への再報告義務を負わない)。
(病院等の管理者について)
1 改正省令に規定する「当該病院等における死亡及び死産の確実な把握のための体制」とは、当該病院等における死亡及び死産事例が発生したことが病院等の管理者に遺漏なく速やかに報告される体制をいう。
2 病院等の管理者は、支援を求めるに当たり、地方協議会から支援団体の紹介を受けることができる。
3 遺族等から医療事故が発生したのではないかという申出があった場合であって、医療事故には該当しないと判断した場合には、遺族等に対してその理由をわかりやすく説明すること。

 

まとめ

 改正省令では大枠のみが定められ、詳細な改正内容は通知で示されていますが、協議会が都道府県単位の「地方協議会」と全国に1か所の「中央協議会」が設けられ、中央協議会には医療事故調査・支援センターが参画する組織体制が明らかになりました。医療事故の届け出について、解釈基準の標準化による医療機関や地域間の格差が解消されるか新たな運用を見守っていきたいと思います。