新専門医制度、運用細則固まる

松山健(嘱託) (2017年4月センターニュース349号情報センター日誌より)

 一般社団法人日本専門医機構(以下「機構」)は、2016年12月16日に承認していた「専門医制度新整備指針」に関して、2017年3月17日の理事会で、「専門医制度新整備指針運用細則」及び「補足説明」を承認し、機構のウェブサイトで意見公募し、同月23日付で正式決定しました。

 

専門医制度新整備指針と運用細則

 今回の運用細則は次の4項目を中心とします。
①過去5年間の専攻医年度採用実績が350名以上の基本領域学会については、都道府県ごとに複数の基幹施設を置く
②研修プログラムの研修施設や募集定員、ローテート内容等について都道府県協議会で協議する
③東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の5都府県では、過去5年の専攻医採用実績の平均値を超えないように、専門医研修プログラムの定員を定める
④卒後臨床研修後の研修は、研修プログラム制とするが、その後、別の基本領域の専門医を取得する場合(ダブルボード)は研修プログラム制、研修カリキュラム制いずれでも選択できる
 以下、運用細則の対象となる「専門医制度新整備指針」の抜粋と細則の概要をご紹介します。
① 基幹施設の認定基準
(指針)
 「大学病院以外の医療機関も認定される水準とするが、対象とする領域は、領域の規模・特性を踏まえることとし、運用細則で別途定める。」(新整備指針16p)
(運用細則)
 過去5年間の専攻医年度採用実績が350名以上の基本領域学会(内科、小児科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、麻酔科、救急科)については、教育レベルを保つ観点から、原則として都道府県ごとに複数の基幹施設を置くが、350名未満の基本領域学会は、各都道府県単位で基幹施設が1つでもよいとします。
② 都道府県協議会
(指針)
 「機構は研修プログラムを承認するに際し、行政、医師会、大学、病院団体からなる各都道府県協議会と事前に協議し決定する」(新整備指針17p)
(運用細則)
 機構は、各都道府県協議会と、当該都道府県内に研修施設群が所在する研修プログラムの研修施設や募集定員、ローテート内容等について協議する。各都道府県協議会は、協議内容について検討の上、機構に対し、研修プログラムについて必要な修正意見を提出することができ、機構は、提出された意見を「基本問題検討委員会」に諮り、必要に応じて「精査の場」で協議し、最終的に理事会で決定するとします。
③ 専門医研修プログラム
(指針)
 「専攻医の集中する都市部の都府県に基幹施設がある研修プログラムの定員等については、都市部への集中を防ぐため、運用細則で別途定める。」(新整備指針12p)
(運用細則)
 対象となる都市部を、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡とし、この5都府県の各基本領域学会専攻医総数の上限を、原則として過去5年の専攻医採用実績の平均値を超えないものとします(超えた場合は、年次で調整)。
 ただし、医師数の減少している外科(1994年に比べて2014年の医師数は89%)、産婦人科(97%)、病理、臨床検査については対象外とします。
④ ダブルボードの運用
(指針)
 「1.本指針で示した各基本領域学会の認定プログラムにおける研修を修了し、当該基本領域学会の資格審査に合格し、機構で認定され基本領域学会の専門医となったものが、その後、他の基本領域学会専門医資格を取得する(ダブルボード)ことは妨げない。」(新整備指針23p)
 「2.ダブルボードの認定については、当該基本領域学会が協同して細則を定め、機構が認定する。」(新整備指針23p)
(運用細則)
 基本領域の専門医取得のため、卒業後臨床研修後ただちに開始する研修は、原則として研修プログラム制とするが、次に別の基本領域の専門医を取得する場合(ダブルボード)は研修プログラム制、研修カリキュラム制いずれでも選択できるとします。

 

まとめ

 機構は、2018年4月の新専門医制度開始を目指し、今後、総合診療専門医の研修内容を本年4月の次回の理事会までに固め、本年5月には研修プログラムの募集を始め、本年8月からは専攻医を募集する方針です。
 医療界からは必ずしもコンセンサスが得られておらず、また国民的な議論もないまま、パブコメの意見募集期間が1週間に満たない短期間で正式決定するなど、機構が制度開始に向けて強引な姿勢で進んでいることについては、必要な専門医の数と質的担保の方法が十分に検討されていない、基本領域の分類やサブスペシャルティの関係が整理されていない等々、医療界からの反発も見られるところであり、今後の進展を見守っていきたいと思います。