初のセンター調査報告書交付事例~事故調査の成果の共有を

柄沢好宣(嘱託) (2017年8月センターニュース353号情報センター日誌より)

初のセンター調査報告書交付事例

 平成29年7月7日、医療事故調査・支援センターから新たに「医療事故調査制度の現況報告(6月)」が公表されました。これは、医療事故調査・支援センターが毎月、その前月末日までの医療事故調査制度の運用状況を報告するもので、今回は平成29年6月末日までのデータが公表されたものになります。
 医療事故調査制度は、運用が開始されて1年半を過ぎ、医療事故報告件数も概ね月に30件前後で推移するようになっています(平成29年6月の報告件数:28件(累計652件))。そうした中、今回の現況報告では、センター調査報告書の交付事例が1件あったことが公表されました。センター調査報告書が交付された事例は、医療事故調査制度の運用が開始されてから初めてのことです。

 

センター調査とは

 医療事故調査制度上の事故調査は、院内での事故調査(外部委員を含む事故調査委員会を立ち上げた上で調査を行うことが望ましいとされています)が行われますが、これに加えて、当該医療機関または遺族から依頼があった場合には、医療事故調査・支援センターが必要な調査(センター調査)を行うことができるとされています(医療法第6条の17第1項)。また、センター調査が終了した場合、医療事故調査・支援センターは、その結果を、調査結果報告書を交付する形で当該医療施設の管理者及び遺族に報告することとされています(同第5項、平成27年5月8日医政発0508第1号)。
 今回の現況報告では、この調査結果報告書の交付事例があったことが、医療事故調査制度の運用開始以降、初めて公になったことになります。
 なお、センター調査の依頼があった40件のうち、残りの39件については、院内調査結果報告書検証中の事例が33件、院内調査結果報告書検証準備作業中の事例が3件、院内調査の終了待ちの事例が3件となっているようです。

 

広く情報の共有を

 今回の現況報告によると、これまで652件の医療事故報告があったのに対し、センター調査の依頼件数は累計40件となっています。つまり、センター調査の依頼があったのは全体の約6.1%です。
 このように、まだセンター調査の実績自体が必ずしも多くない中、センター調査がどのように行われているかは、ひとつの関心事であると思われます。実際、本年5月27日(土)に開催された医療事故情報センター総会記念シンポジウムでも、センター調査の実施状況や、その結果についての報告・公表のあり方についてディスカッションがなされたところです。
 どういった事例が医療事故報告の対象になっており、どのような調査・分析作業が行われ、どのようにとりまとめをされているかといった情報は、当該医療施設のみならず、他の医療施設においても日頃の診療や院内調査を進めていく上での参考になるのではないでしょうか。その意味で、センター調査の結果についても、何らかの形で公表されることが望ましいと思われます。
 上記シンポジウムでは、センター調査の結果について公表は予定されていないとのことでした。しかし、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」では、評価結果報告書の概要が公表されていたこともあります。こうした可能性も含め、事故調査の成果が広く共有されることが期待されるところです。