医師の働き方改革~検討会における論点の整理

柄沢好宣(嘱託) (2017年10月センターニュース355号情報センター日誌より)

論点整理の内容

 9月21日(木)に開催された厚生労働省「第2回 医師の働き方改革に関する検討会」において、同検討会における論点整理案が示されました。
 同日の検討会において示された論点案は大きく次の4つです。

1.医師の勤務実態の正確な把握と労働時間の捉え方
2.勤務環境改善策
3.関連して整理が必要な事項
4.時間外労働規制等の在り方

 論点1では、「医師の勤務実態の精緻な把握」という項目が掲げられています。どんなことにも共通することかと思いますが、何かしらの方策を立案するためには、まずは事実・実態をきちんと把握しなければ、実効性のある方策にはなりません。議論の出発点となる作業ですので、丁寧な事実の拾い上げが期待されるところです。

 

議論のポイントとして

 各論点とも、それぞれ重要検討事項であると思いますが、今後の議論において最も難しい問題を孕むのが、関連法制との調整をどのように考えるかというところではないでしょうか。
 言うまでもなく、基軸として見据えなければならないのが各種労働法制です。労働時間をはじめとする労働条件については、労働基準法等の労働法規により、時代時代に応じて改善が重ねられてきました。
 他方で、医師には医師法19条1項に基づく応召義務があります。そのため、労働時間などの画一的な基準だけで処理できないというディレンマが存在します。特に、この問題が顕在化しやすいのは、夜間や休日に外来を担当することの多い研修医をはじめとする若手医師の働き方ではないでしょうか。
 論点3で「医師の応召義務の在り方」という項目が、論点4で「時間外労働規制の上限の在り方」という項目がそれぞれ挙げられています。まさにこのあたりを整合性をもって、しかも臨床現場に無理なく実践できるかが大きな課題となってくると思われます。

 

今後の進め方

 医師の働き方に関する問題は、個々の医師の労働者としての人権問題という意味で極めて重要です。また、それを臨床現場の中で見たとき、場合によっては患者さんにも少なからぬ影響を及ぼしうるという点でも、看過し得ない問題です。
 第2回検討会にて確認されたところでは、今年いっぱいかけて医師の勤務実態に関する調査等が行われるようです。その後、来年1月には中間整理が行われ、医師需給分科会の議論に反映させながら、さらに翌平成31年3月頃を目安に報告書をとりまとめることが予定されています。
 このように、最終的な報告書のとりまとめがされるのはもう少し先のことのようですが、個々の医師の人権問題という視点からも、医療安全という視点からも、今後の動向が気になるところです。