カルテ開示費用に関する調査

柄沢好宣(嘱託) (2018年2月センターニュース359号情報センター日誌より)

特定機能病院を対象として調査

 昨年10月に、カルテ開示にあたっての費用や開示の条件について、厚生労働省が特定機能病院を対象として調査を行うという報道がなされました(毎日新聞・2017年10月22日)。12月には、引き続き調査中であるとの報道もなされています(同・2017年12月13日)。
 これらの報道によると、カルテ開示の手数料について、「医療情報の公開・開示を求める市民の会」(大阪)が、5000円以上の手数料を請求している病院があり、個人情報保護法に反する疑いがあると指摘しており、これを受けて厚生労働省が調査に動き出したようです。

 

カルテ開示費用に関する規律

 個人情報保護法第33条2項は、個人情報取扱事業者が情報の開示請求にあたって手数料を徴収する場合には、「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内」においてその額を定めるものとしており、具体的な指標を示すものになっていません。個人情報保護法は、広く個人情報一般に関して定めるものですが、厚生労働省策定の「診療情報の提供等に関する指針」でも、「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内」の額としなければならないとしています。
 具体的な費用の算定・請求については、上記を踏まえた各医療機関での判断ということになっているものと思われます。

何のためのカルテ開示?

 カルテ等に記録されている診療情報は、医師をはじめとする医療者が診療方針を検討するにあたって必要不可欠な情報である一方で、患者が自分自身の診療について知るという意味でも極めて重要な情報です。そして、患者が自身の診療情報にアクセスすることは、いわゆる「知る権利」の一環として最大限尊重されるべきものです。
 もし、カルテ開示にあたって、実費以上にあまりに高額な費用がかかるとすれば、それだけでカルテ開示を断念せざるを得ないという事態にもなりかねません。これでは、患者の「知る権利」が保障されたことにはなりません。

診療情報へのアクセスを容易にするために

 上述のように、カルテ開示費用についての定めは、かなり一般的な規律にとどまっています。法律やガイドライン等で詳細な基準を定めることは必ずしも容易ではありません。しかし、今回の調査によって、なにがしかの課題が浮かび上がってくるようであれば、それが広く公表されることで、医療機関全体での指標として大いに意義のあるものになると思います。
 昨年10月の報道では、同月中にとりまとめが行われる方針であるとされていましたが、12月の報道の段階でも調査中となっており、とりまとめやその結果の公表等の時期については流動的なようです。
 しかし、患者が自身の診療情報へアクセスしやすい環境を構築するためにも意義のある調査であると思われますので、引き続き、情勢を追っていきながら、こちらでも適宜ご報告できるようにしたいと考えています。