医療機関ウェブサイト広告規制

松山健(常任理事) (2018年3月センターニュース360号情報センター日誌より)

医療法改正

 平成29年2月の本稿で、第8次医療法改正案の一部として、医療機関のウェブサイト等における虚偽・誇大等の表示規制の創設についてご紹介しました。
 従来から、医療機関のホームページは、原則として医療法上の「広告」(同法6条の5以下)とは扱われないとの解釈のために、美容医療等で行き過ぎた広告が横行していた状況を踏まえ、平成29年6月の医療法改正で医療機関ホームページなどに虚偽内容などがある場合に、広告と同様の是正命令や罰則を課せるようになりました。

 

新ガイドライン(案)

 平成29年11月29日の第7回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会では、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化 のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)(仮称)」が了承され、平成30年1月24日の検討会では、パブリックコメントを反映した形で、省令案、告示案、ガイドライン案が了承され、平成30年6月1日から施行される見込みです。
 新ガイドライン案では、禁止される広告として、誇大広告等に並んで、
(患者体験談)
患者その他の者の主観又は伝聞に基づく体験談の広告
(ビフォーアフター写真)
治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告
が挙げられています。
 患者等に広告と気付かれないように行われる、いわゆるステルスマーケティングや個人が運営するウェブサイト、SNS の個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載なども、医療機関が広告料等の費用を負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどの場合には規制対象となるとされています。

ウェブサイト監視体制強化

 改正医療法に基づき、厚生労働省では、期待される効果として、「ウェブサイトの監視体制の強化により、美容医療サービスを提供する医療機関等のウェブサイトの適正化につなげ、消費者トラブルの減少を目指す。」として、
①広告等の監視
 医業等に係るウェブサイトが医療広告規制等に違反していないかを監視
②規制の周知等
 不適切な記載を認めた場合、当該医療機関等に対し、規制を周知し、自主的な見直しを図る
③情報提供・指導等
 改善が認められない医療機関を所管する自治体に情報提供を行なう(自治体は指導等を行なう)
④追跡調査の実施
 自治体に対する情報提供の後の改善状況等の調査を行う
こととし、平成29年8月24日より、「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」を開始し、厚生労働省委託事業として「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業 医療機関ネットパトロール」(http://iryoukoukoku-patroll.com/)設置を日本消費者協会(JCA)に委託し、通報フォームや相談窓口への電話により、広く一般から通報を受け付け、医療機関のウェブサイトの監視体制を強化していました。

実施5カ月の状況

 1月末までの実施5カ月の間で、厚労省の調査により、「国内最高峰の治療」「モデルも通う」などと虚偽・誇大な広告をウェブサイトで行っていた医療機関は112件あり(厚労省はこれらの医療機関に、自主的な改善を促す通知を出した)、12月までに審査した730サイト中、「副作用はありません」「満足度ランキング1位」などの不適切な記載が85サイトでみられたとの報道がなされています。

 

まとめ

 新ガイドライン案は、美容医療だけでなく、末期がん患者を対象とする悪質な消費者事件に近い事例にも関わる内容になっています。厚労省ウェブサイトの医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会のページで見ることができますのでご一読いただければと思います。