医療広告ガイドラインの策定

柄沢好宣(嘱託) (2018年6月センターニュース363号情報センター日誌より)

医療法の改正とガイドライン策定

 平成29年6月14日に医療法が改正され、本年6月1日にこれが施行されました。
 このセンター日誌においても、これまで医療法の改正や、これに関連する医療広告の規制見直しに関する話題が取り上げられました(2017年2月号、7月号、2018年3月号参照)。
 それぞれのポイントについては、これまでの掲載誌をご参照いただければと思いますが、6月1日の改正医療法施行に伴って、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告ガイドライン:以下、単に「ガイドライン」)が新たに策定されましたので、今回はこれについて少しご紹介致します。

医療に関する広告規制の基本的な考え方

 ガイドラインでは、限定的に認められた事項以外の広告は原則として禁止するとのこれまでの考え方は引き続き堅持しつつも、規制対象を「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」に拡大する一方、患者等に正確な情報が提供されその選択を支援する観点から、医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合については、幅広い事項の広告を認めるとの基本的な考え方を示しています。
 この「医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合」について、ガイドラインの「第4 広告可能事項の限定解除の要件等」で、次のように紹介されています。

 

①医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
②表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

バランスのある舵取りを

 患者さんとしては、どんな医療機関を受診すれば良いかを判断するため、ウェブサイトを初めとする各種メディアから情報を入手したいと考えることは至極当然であると思われます。こうした患者さんの要望に応えるためには、やはり一定の情報発信がされていることは不可欠であろうと思います。
 一方で、現在はインターネットを通じて誰もが簡単に様々な情報にアクセスすることができるため、不適切な内容・方法で情報が発信されてしまうと、受け手に甚大な被害が生じる可能性もあり得ます。
 医療に関する広告の規制は、この両者の微妙なバランスを見極めつつ進めて行かねばならない非常に難しい問題であるように思います。医療機関の運営だけでなく、患者さんの利益にも直結する問題でもあり、引き続き注目していきたいテーマのひとつです。