カルテ開示に高額請求

柄沢好宣(嘱託) (2018年8月センターニュース365号情報センター日誌より)

厚生労働省による調査

 本年2月の本誌において、厚生労働省がカルテ開示にあたっての費用や開示条件について特定機能病院を対象として調査を行うとの報道があったことをご紹介しました。
 今般、この調査の結果を受けて、厚生労働省から各都道府県宛に通知(平成30年7月20日 医政医発0720第2号「診療情報の提供等に関する指針について(周知)」:以下、単に「通知」といいます)が発出されました。
 通知では、留意事項として、次の2点が明記されています。

 

・診療記録の開示に要する費用は、実際の費用から積算される必要があるが、個々の申し立てに応じその費用が変わり得るところ、開示に要する費用を一律に定めることは不適切となる場合があること。

 

・医師の立ち会いを必須とすることは、患者等が診療記録の開示を受ける機会を不当に制限するおそれがあるため、不適切であること。

調査項目と結果

 今回の調査では、①診療録の開示に要する費用、②診療録の開示の際の医師の立ち会いの有無、③遺族に対する診療録の開示手続き等について調査が行われました。
 ①の費用については、白黒1枚を請求した場合の費用として、「2,000円~2,999円」が2%、「3,000円~3,999円」が15%、「5,000円以上」が16%という結果が示されました。
 本年2月号でもご紹介したとおり、カルテ開示にあたっては、「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内」で費用を徴収すべきことが厚生労働省策定の指針等で示されています。白黒1枚の記録の開示を受けるだけで数千円という費用を徴収している医療機関が30%以上にも及んでいるという調査結果には、驚きを隠せませんでした。
 また、②の医師の立ち会いの有無については、5%の医療機関で医師の立ち会いを必須としているとのことで、これにも驚きました(個人的な経験として、カルテの開示に医師が立ち会ったということはありません)。

 

開示手続きを通じての実情把握も

 これも本年2月号で述べましたが、カルテ開示については、できる限り患者さんの側にハードルを与えるようなことは回避されるべきです。
 今回の調査は、どちらかといえば開示を受ける段階での対応の状況に軸足が置かれているように思われます。
 しかし、カルテ開示には、申請から実際に開示を受けるまでの手続きの流れがあります。その各段階で、患者さんの側で心理的抵抗を感じないような取扱いがなされることが要請されます。
 例えば、直接主治医に依頼しなければならない、開示理由を明示しなければならない等、そもそも開示申請をする段階から患者さんの側でハードルに感じるような取扱いがされていないかについても、実情を把握する必要性は高いのではないでしょうか。