正確な情報発信に向けて

柄沢好宣(嘱託) (2019年2月センターニュース371号情報センター日誌より)

正確な医療報道を求めて

 昨年のセンターニュース12月号の本稿において、医療安全の一翼を担うメディアについて言及しました(本誌2018年12月号「メディアと医療安全 ~本年1年を振り返って」)。
 折よく、新年早々報道で、「メディアドクター」という取り組みが国内でも広がりつつあるという報道を目にしました(平成31年1月8日 中日新聞「広がる『メディアドクター』」)。私は、「メディアドクター」というものをこの報道で初めて知りましたが、報道によれば、メディアドクターとは、質の高い医療や健康情報の報道を実現するために、実際の医療報道について評価・議論を行う取り組みであり、2004年にオーストラリアで始まったものが、アメリカ、ドイツ、インドへと広まり、日本では2007年に東京でメディアドクター研究会が立ち上がったそうです。
 評価を行うにあたっては、既存の代替手段との比較がされているか、科学的根拠の質を踏まえているか、副作用・合併症について情報提供をしているか、見出しが記事の内容を適切に要約しているかなど、10個の指標を用いて当該医療報道に関する“診断”を行っているとのことです。

 

情報の中立性・公正性

 医療報道に限ったことではありませんが、様々な要因を背景事情として、偏頗的な情報発信がなされることは少なくありません。一方で、情報の受け手も、必ずしもすべての人が目の前の情報を正しく分析できるわけではありません。発信される情報の内容が中立公正であるべきであることは、論を俟たないところかと思われますが、特に医療報道は、場合によっては情報の受け手の身体・生命に対して大きな影響を与えかねないこともある点で、より強く中立性・公正性が求められるもののひとつです。
 メディアドクターのような取り組みが広がることで、患者さんの側も自分の受ける医療についてできるだけ正しい知識・理解を持てるようになれば、より医療が質の高いものとなるのではないでしょうか。

 

報道に限らず

 もっとも、こうした中立性・公正性が要求されるのは、なにも報道に限られたことではありません。患者さんの側に対する正しい情報の伝達は、直接的にはむしろ普段の診療の過程においてこそ求められることです。上記指標についても、代替手段の有無や副作用・合併症に関する情報提供などは、実際の診療において具体的に治療方針を選択する場面においてもそのまま当てはまることではないでしょうか。
 そして、翻ってみれば、私たち弁護士の業務においても、同じことが言えるのかもしれません。きちんと事件の見通しを依頼者に伝えることができているか、他にとるべき選択肢はないか、事件処理の方針に合理性があるかなど、医療報道に関する評価指標とパラレルに考えられる部分は決して少なくないように思います。
 医療事故情報センターも、医療安全に関する情報発信の担い手のひとつとして、今後とも様々な視点を踏まえた情報発信に努めて参りたいと思います。