医師からのタスク・シフティングを考える~医師の働き方改革と医療の安全

柄沢好宣(嘱託) (2019年8月号センターニュース377号情報センター日誌より)

厚生労働省によるヒアリングはじまる

 医師の働き方改革の一環として、医師の業務を多職種に移管するタスク・シフティングが注目されてきましたが、現在、厚生労働省により、各学会等に対するヒアリングが進められています。
 第1回のヒアリングが6月17日に行われ、第2回が7月17日に、第3回が7月26日に開催されています。各ヒアリングにあたって各学会等が作製した資料については、厚生労働省のホームページで確認いただけます。

 

【厚生労働省ホームページ】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05173.html

日本医師会の見解

 医師から他業種へのタスク・シフティングを考える上で、医師法17条が「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めていることに抵触しないことはもちろんですが、根本的には安全な医療が確保されているかが必須の検討事項になると思われます。
 この点について、日本医師会作成のヒアリング資料には、日本医師会としては国民の安全な医療に資するかを判断基準とすることを掲げた上で、タスク・シフティングを考える上では、そのために新たな職種を創設するのではなく、既存の業務の周知・徹底や、それが実践されていない場合にはその実情を検証することを提唱しています。
 また、2015年10月より運用が開始された特定行為に係る看護師の研修制度(特定行為研修)についても、特定行為を拡大させるのではなく、研修のパッケージ化と修了者の増加を最優先すべきであるともされています。

 

【日本医師会:医師からのタスクシフティングについて】
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000518059.pdf

 

現状の振り返りを踏まえた上での議論を

 新たな枠組みを創設することでタスク・シフティングを実現することは、場合によっては医業を医師の独占としている趣旨を不明確にしてしまうこともあり得ます。改革を考える上では、新たな取り組みを検討しなければならない場合もあろうかと思いますが、まずは既存の制度を充実させることなくしては、議論の方向性を誤らせることにもなりかねません。
 つい先頃の7月24日、中央社会保険医療協議会において、来年度の診療報酬改定に向けた議論の概要が公表されましたが、その中でも、特定行為研修の修了看護師が必ずしも現場で活用されていないといった実情が検討課題として挙げられています。

 

【令和2年度診療報酬改定に向けた議論(第1ラウンド)の概要】
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000531114.pdf

 

 こうした実情を振り返り、医療の安全を確保しながらも、より実効的な対策が検討されることが期待されます。