新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての遠隔診療

柄沢好宣(嘱託) (2020年6月センターニュース387号情報センター日誌より)

厚労省医政局より

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、なおも予断を許さない状況が続いております。
 こうした中、本年4月10日付で、厚生労働省医政局より、事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」が発出されました(https://www.mhlw.go.jp/content/R20410tuuchi.pdf)。
 遠隔診療のあり方については、平成30年3月に厚労省において「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が作成されています(令和元年7月に一部改訂)。

 

医療機関における対応

 指針では「初診については原則直接の対面で行うべきである」とされていましたが、今回の事務連絡では、一定の場合には「初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をして差し支えない」とされています。
 指針において、初診は原則対面で行うとされているのは、遠隔診療では得られる情報に限りがあり、必要な情報をできる限り得るためには日頃から医師と患者の信頼関係が構築されている必要があるという考え方に基づいています。これは、無診察診断・処方を禁止する医師法20条の趣旨にも沿うものと理解されます。
 こうした考え方に配慮したものと思われますが、今回の事務連絡では、初診から遠隔診療を行うことは差し支えないとした上で、実際にこれを実施する場合には、「初診から電話や情報通信機器を用いて診療を行うことが適していない症状や疾病等、生ずるおそれのある不利益、急病急変時の対応方針等について、医師から患者に対して十分な情報を提供し、説明した上で、その説明内容について診療録に記載すること」など、いくつかの留意点が示されています。また、医療機関から都道府県へ、都道府県から厚労省へ、それぞれ実施状況を報告することともされています。

 

注目される今後の動向

 事務連絡の末尾では、「本事務連絡による対応は、新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療機関への受診が困難になりつつある状況下に鑑みた時限的な対応である」とされた上で、原則として3か月ごとに検証を行うとされています。そして、この検証は、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況や、本事務連絡による医療機関及び薬局における対応の実用性と実効性確保の観点、医療安全等の観点から改善のために」行うものとされています。
 医療関係者の皆様をはじめ、大変に厳しい状況が続いている中で、円滑な医療が行われるためには、社会全体で様々な工夫をしていかねばならないものと思われますが、その際には、事務連絡にも明示されているとおり、医療安全の観点も置き去りにされてはなりません。
 今後の検証が行われる中では、医療現場の対応として実効性のあるものとなっているかはもちろんのこと、医療の安全が適切に確保されたものとなっているかという視点でも、動向を見守っていきたいところです。