感染症法改正に反対する再度の理事長声明

感染症法改正に反対する再度の理事長声明
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感染症法改正に反対する再度の理事長声明

2021/01/30

医療事故情報センター

理事長 弁護士 柴 田 義 朗

 

名古屋市東区泉1-1-35 ハイエスト久屋6階

電話・052-951-1731 FAX・052-951-1732

http://www.mmic-japan.net/

 

 医療事故情報センターは、本年1月26日、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、「感染症法」といいます。)について、新型コロナウイルス感染症対策として、入院措置に応じない者や積極的疫学調査を拒否・虚偽報告等した者について罰則を科す改正案に反対する声明を明らかにしました。その後の報道によれば、現在、刑事罰規定を撤回し、行政罰規定にする修正が進んでいるようです。

 

 しかしながら、罰則が刑事罰ではなく、行政罰であっても、すでに深刻な問題となっている新型コロナウイルス感染症に対する差別や偏見をさらに助長することになりかねない以上、ハンセン病やHIV感染症患者等に対する差別や偏見が存在したという事実に対する反省を踏まえ、感染症患者等の人権を尊重し、感染症患者等に対する良質かつ適切な医療の提供を確保するために制定された感染症法の理念に反することに変わりはありません。

 また、差別・偏見の眼にさらされることを恐れ、検査を受けることや医療機関で正確な病状を申告することなどをかえって妨げることにもなりかねず、感染症対策としての実効性においても強い懸念があることも、刑事罰と行政罰とで変わるところではありません。

 

 新型コロナウイルス感染症への対応は、十分な検査・診療体制と迅速かつ正確な情報提供体制が総合的に整備されること、差別や偏見の解消のための施策の実現こそが重要です。そうした施策を十分に尽くす以前に、行政罰であろうとも、罰則を背景として国民に協力義務を課すことを拙速に進めることは、医療における人権の確立を目指す当センターとして到底容認することはできません。

 医療や感染対策に取り組んでいる医療者・保健所をはじめ、ハンセン病の患者であった方々、患者・市民団体、弁護士会、宗教者らも、こぞって罰則規定に反対する意見を表明しています。罰則規定が到底、容認できないからに他なりません。

 

 当センターは、行政罰も含めて罰則規定を背景に新型コロナウイルス感染症に入院を強制するなどとする感染症法改正に対し、再度、強く反対します。