医療法等の改正~医師の働き方を見直す

柄沢好宣(嘱託) (2021年6月センターニュース399号情報センター日誌より)

法案可決

 5月21日、参議院本会議において「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」が可決されました。

 なお、同法案は、4月8日衆議院を通過しています。

改正の概要

 厚生労働省が公表している資料(https://www.mhlw.go.jp/content/000731828.pdf)によると、今般の改正の概要は次の4つの柱から構成されています。

 

1.医師の働き方改革

2.各医療関係職種の専門性の活用

3.地域の実情に応じた医療提供体制の確保

4.その他(持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長)

医師の働き方改革

 1については、医療法の改正により、医師の時間外労働に上限を設け、2024年4月からこれを運用できるようにするための措置を講ずることとされています。具体的には、

 

・勤務する医師が長時間労働となる医療機関における医師労働時間短縮計画の作成

・地域医療の確保や集中的な研修実施の観点から、やむを得ず高い上限時間を適用する医療機関を都道府県知事が指定する制度の創設

・当該医療機関における健康確保措置(面接指導、連続勤務時間制限、勤務間インターバル規制等)の実施

 

といった点が盛り込まれています。

 なお、時間外労働の上限としては、一般の勤務医で年間960時間、救急医療などを担う医師で年間1860時間との方針も示されています。

タスクシフト/シェア

 2については、診療放射線技師法や救急救命士法等の改正により、医療関係職種の業務範囲の見直しをはかることで、医師の負担軽減・医療関係職種の専門性の活用のためのタスクシフト/シェアの推進が盛り込まれているほか、医師法・歯科医師法の改正によって、共用試験合格を医師国家試験の受験資格要件とし、これに合格した医学生が臨床実習として医業を行うことができることが明確化されています。

 タスクシフト/シェアの点に関しては、猪口雄二日本医師会副会長が、4月27日の参議院厚生労働委員会に参考人として出席し、今般の改正による業務拡大にあたっては、医療安全の観点からの教育・研修体制が必須となると述べています。

医療安全につながる運用に期待

 こうした医師の働き方に関する見直しは、現場の医師の個々の負担の軽減に資することはもちろんですが、その波及的効果として医療安全の向上へとつながることも期待されるように思います。

 現場の調整もそう容易でない部分もあるように思われますが、医療安全という観点からも今後どのように影響するのか、動向を見守りたいところです。