医療事故情報センター30年間のあゆみ

柄沢好宣(嘱託) (2021年10月センターニュース403号情報センター日誌より)

設立30周年を迎えました

 医療事故情報センターは、2020年12月で設立30周年を迎えました。正会員の皆様をはじめ、協力医の先生方、関係諸団体の皆様、これまでセンターの活動にご理解・ご協力をいただいてきた皆様に改めて感謝申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の拡大による1年の延期を経て、本年10月2日(土)に医療事故情報センター設立30周年記念企画「医療事故被害は救済されているか -今、医療事故情報センターに求められるもの-」が開催されます(多くの皆様は、企画終了後に本誌を受け取られていることと思います)。

30年間を振り返って

 30周年記念企画の開催に合わせて、センター30年(正確には31年)のあゆみをまとめた小冊子の作成も進めています。

 30年間のあゆみを振り返ってみますと、月並みではありますが、本当に色々な出来事の積み重ねで医療安全に関する今の姿があるのだということを改めて感じさせられます。

 おそらく、医療安全の歴史を語る上で、大きな転換点となったのは、“医療安全元年”とも呼ばれるようになった1999(平成11)年に起きた、横浜市立大学での患者取り違え事件や都立広尾病院事件といった、社会的にも大きく耳目を引いた医療事故であろうと思われます。当時、私は中学2年生でしたが、この時の報道ではじめて医療事故というものを知ったように思います。

 その後も、報道で大きく取り上げられる医療事故も度々発生してきましたが、当然、それ以外にも数多くの医療事故が発生しており、そうした反省の積み重ねから、医療事故調査制度等の取り組みへとつながっているものと思います。

 言葉を変えれば、多くの医療事故被害の上に今の医療安全の到達点があると言えるのではないでしょうか。

医療事故被害の救済とは

 センター設立からこの間も、医療安全文化の醸成に向けて一歩一歩、地道な歩みがありました。しかし、医療事故が後を絶つことはなく、また、十分な医療事故の被害救済につながらないケースも少なからず経験します。

 そこで、今回の30周年記念企画では、医療事故被害に今一度目を向け、その被害救済がどうあるべきか、そのために医療事故情報センターに何ができるか、何をすべきかを今一度見つめ直す機会にしたいと考えました。当日は、家族が医療事故被害に遭われた方々にもご出演いただき、それぞれのご経験についてお話しいただきます。

 一般の方や正会員の皆様だけでなく、医療従事者や報道関係者の方々も含め、180名近くの方から参加申込みをいただいています(9月26日現在)。本年5月の総会記念シンポジウムに引き続きオンラインでの開催となる関係で、当日の交流が難しい中ではありますが、ご参加いただいた皆様に、医療事故被害の実態を感じていただきつつ、その再発防止や救済のためにどのような社会であるべきかを考えるきっかけとなっておりましたら大変嬉しく思います。また、当日ご参加いただいたご感想などもお寄せいただけますと幸いです。