医療事故調査制度、報告体制の調査

松山 健(常任理事)(2022年11月センターニュース416号情報センター日誌より)

制度運用開始から7年

 患者の予期せぬ死亡の原因を調べる医療事故調査制度は、2022年10月1日で7年を経過しました。

 制度は2015年に始まり、事故の報告先の第三者機関である医療事故調査・支援センターには、2021年末までに2248件の事故報告がありました。

 毎年の報告件数は、300件台と、制度創設当初見込まれていた年間1000件の報告件数に遠く及ばない件数にとどまっています。

 地域や医療機関の間での報告件数のばらつきの程度等から実際の発生件数よりも報告件数は少ないとの指摘もあり、報告を要する事故と判断するかどうかが医療機関側(「病院等の管理者」医療法第6条の十~)に委ねられていることなどが報告件数が少ない背景と言われています。

 そして、新型コロナウイルス流行後は、医療現場での手術の見合わせ等が影響し減少傾向にあります。

報告体制の整備のための研究班

 このような現状で制度運用開始から7年が経過する2022年10月1日、厚労省は今後、事故報告体制などを整備することを公表しました。

 厚生労働省は、医療事故調査・支援センターを運営する日本医療安全調査機構などを主体として研究班を設置し、高度医療を提供する特定機能病院から地域の診療所までさまざまな規模の医療機関を全国から約3000施設選び、2023年春にもアンケート調査を実施する方針です。

アンケート調査

 アンケート調査では、医療機関の事故判断手順(事故の判断に際し会議や基準はあるか、医療安全に関する専従担当者を置いているか等)や報告先となる第三者機関である医療事故調査・支援センターへの事故報告体制などについて実態調査をする予定です。

 

まとめ

 6月の本稿でご紹介したように、日弁連は、2022年5月10日付けで6項目の提言を内容とする「医療事故調査制度の改善を求める意見書」を取りまとめて、同月13日付けで厚生労働大臣及び法務大臣宛てに提出しています。

 提言の2は次のようなものでした。

 「2 医療機関あるいは遺族から相談を受けた医療事故調査・支援センターが、調査が必要であると判断した場合には、当該医療機関に調査の実施を促すことができ、当該医療機関が一定期間内になお調査を開始しないときは、同センターが調査を実施できる制度を創設すること。」

 医療事故調査制度は、うまく機能すれば、起こらずに済んだかもしれない医療事故による不幸な被害を大きく減らし、フィードバック・ループによって医療の質と安全を徐々に向上させて患者にも医療者にも奉仕することができるはずの仕組みです。

 研究班には今後の調査によって現在の機能不全の原因を的確に把握し、その後の検討に際して、報告体制の再構築として、日弁連の提言2の採用も視野に入れて、本制度をより実効性のあるものにする改善策を講じられるよう期待したいところです。