堀康司(常任理事)(2023年1月センターニュース418号情報センター日誌より)
第8次医療計画の検討状況
2022年12月9日、厚労省の第8次医療計画等に関する検討会は第20回会合を行い、意見のとりまとめの議論を行いました。
医療計画は、都道府県が国の定める基本方針に即して、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために策定されます。第8次医療計画は2024年からの6年間を対象とするものであり、今年度末を目途として国が基本方針・医療計画作成指針を改定し、来年度には都道府県が地域の実情に応じて第8次医療計画を定めることが予定されています。
病院等の管理者への研修と安全管理体制の外部評価の促進
第8次医療計画の作成指針では、病院等の管理者が医療事故調査・支援センター等による研修を受講した医療施設数の割合が項目に追加される見通しです。
病院等の管理者は、医療法上の医療事故調査の対象となる事故か否かを判断するという重要な役割を担っています。しかしながら、実際には、医療事故調査・支援センターが開催する医療事故調査制度管理者・実務者セミナーに出席する管理者は、令和3年度でみても、全国でわずか120名に留まっています。そのため、今回の作成指針の改定において、管理者自身による研修参加を促すために、医療計画の中に管理者の研修出席割合を項目に入れ込む方針とされました。
2015年10月に医療事故調査制度の運用が開始されてから2021年末までの間に、医療事故の報告実績を持つ医療機関は1229施設に留まり、99.3%(17万8187施設)からは報告実績がないままとなっています。診療所や病床の少ない病院などでは報告実績がないことも理解はできますが、500床~899床規模の病院の3~4割が報告実績なしという状況は、事故の発生が正しく報告されていない可能性を強くうかがわせるものです。医療計画を通じて管理者自身の研修参加が促進されることによって、管理者が正しく医療法上の医療事故調査制度の趣旨と内容を理解することに繋がることを期待したいところです。
安全体制の外部評価や医療安全支援センターの機能向上も
この他に、今回の医療計画の作成指針の改定では、各施設における医療安全の取り組み状況に対する客観的な評価を進めることを目的として、医療安全対策について外部からの評価を受けている病院の割合も、項目として追加される見通しです。
また、都道府県は、二次医療圏毎に医療安全支援センターを設置していますが、その運用実態には大幅なバラツキがあります。そのため、相談等を担当する職員の研修受講率や、同センターによる医療従事者を対象とした研修の実施率の向上をはかるための項目も追加される予定です。
これまでも、都道府県には、地域の医療機関や関連団体と連携して医療安全推進協議会を設置することが求められていましたが、実際に協議会が定期的に開催されている割合は27.4%と低調であるため、開催状況についても医療計画の項目に盛り込まれることが見込まれます。
患者安全の立場から各地の作成作業の把握を進める必要性
新年度からは改定された指針に沿って、各都道府県における実際の医療計画策定作業が進められることとなります。患者の立場からも、それぞれの地域の医療計画作業状況を注視して、適切な医療計画立案を通じて医療が安全なものとなるよう積極的に働きかけることが望まれます。