教える側に立っての気づき ~2023年を振り返りつつ

柄沢好宣(嘱託)(2023年12月センターニュース429号情報センター日誌より)

母校にて

 今年から、私の母校である南山大学法科大学院(ロースクール)で非常勤講師として「医療と法」の講義を受け持っています。

 この「医療と法」の講義は、私の在学中は加藤良夫先生が教授として受け持っておられ、私は学生として受講していたものです。今度は教える側に立つことができたことを素直に嬉しく感じつつも、学生に少しでも関心を持ってもらえるにはどうすればよいか悩みながら、毎週の講義に臨んでいます。

輸血拒否に関する判例と近時の報道

  講義の中では、学生時代に勉強した著名判例を取り扱うことも多いですが、学生の頃とはまた違った視点でこうした判例を振り返ることができ、私にとっても貴重な機会となっています。

 医療に関連するこうした著名判例のひとつに、信教上の理由によりいかなる場合も輸血を拒否する意向を示していた患者に対して、場合によっては輸血を行うことがあるとの方針を説明しないまま手術中に輸血が行われたことについて、患者の自己決定権侵害を認めたとされる最三小判平成12年2月29日(民集54巻2号582頁)があります。

 学生時代に勉強していた頃は、つい過去の事件というとらえ方をしてしまっていましたが、先日、いわゆる宗教2世と輸血拒否に関しての一連の報道が見られました(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231121/k10014264031000.htmlhttps://news.yahoo.co.jp/articles/8d809bec1e19f159959f7f31df3063681f9ff3e0)。

 昨年の夏頃にも、知己の医師の方から、信仰上の理由による輸血拒否に関連して近時訴訟になったような事例があるかというお問い合わせをいただいたこともあり、医療の現場において現在進行形で軽視できない課題として今なお存在するのだなと改めて感じました。

 判例となっている事案は、実務に就いてはじめて理解できるようなことも少なくないため、学生の方にはなかなかイメージを持ちにくいところもあるかもしれませんが、ただ過ぎ去った出来事として判例を学ぶのではなく、それが現代にどう影響しているか、新たにどんな問題が起きているのかなど、身近な問題に引きつけて考えてもらえるよう、講義の内容も工夫していかなければならないと考えています。

来年もよろしくお願いいたします

 さて、今年も残すところわずかとなって参りました。

 今年はセンターの事務局体制にも変化があり、各方面何かとご不便をおかけしてしまった年ではないかと思いますが、様々な方々からのご支援・ご助力により、なんとか1年支えていただくことができました。心より御礼申し上げます。

 来年も引き続きセンターとしての活動を続けて参りたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 さしあたり、来年1月27日(土)13時より、第34回弁護士のための医療過誤訴訟法講座を開催します。今回は、林誠司先生(北海道大学法学研究科法律実務専攻民事法講座教授)をお招きし、「説明義務違反と民事上の責任について」と題してご講義いただきます。弁護士の皆様には奮ってご参加ください。