松山健(常任理事)(2025年8月センターニュース449号情報センター日誌より)
「医療DX令和ビジョン2030」
令和7年7月1日、「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームが開催され、医療DXの進捗状況について、電子処方箋・電子カルテの目標設定等について検討されました。
今回は、医療DXの要ともいうべき「全国医療情報プラットフォーム」についてご紹介します。
次の3つの柱を骨格とする医療DXについては、本稿でも以前にご紹介(執筆・柄沢好宣常任理事)していますので、ご参照ください
(https://www.mmic-japan.net/2022/10/01/diary/)。
①全国医療情報プラットフォーム
②電子カルテ情報の標準化、標準型電子カルテの検討
③診療報酬改定DX
医療DXの3本柱の中でも、「全国医療情報プラットフォーム」は、プラットフォームの「物事の基礎・土台・環境」という意味の通り、DXの基盤として機能する重要な役割を担う大黒柱といえます。
「全国医療情報プラットフォーム」とは?
全国医療情報プラットフォームは、「オンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診等情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテ等の医療(介護を含む)全般にわたる情報について共有・交換できる全国的なプラットフォームをいう」と定義されています。
現在、医療機関、介護施設、公衆衛生機関、自治体でバラバラに保存・管理されている患者個人の医療関連情報を、一つに集約して閲覧共有・管理し、システム上、全国的にリアルタイムで共有できる状態を目指すものとされています。
「全国医療情報プラットフォーム」が有意義に活用される例
このように、「全国医療情報プラットフォーム」は、多様な医療全般の情報を共有・交換できるプラットフォームとして、マイナンバーカードの電子署名活用による同意書や承諾書のデジタル化や、患者本人による情報の閲覧、患者本人同意の下での医師や薬剤師との情報共有などによって、患者の利便性の向上と診療や治療の質の向上に資することを目指すとしています。
プラットフォームが機能することで意義を発揮する場面として次のような例が挙げられています。
①救急・医療・介護現場の切れ目ない情報共有
・意識不明時に、検査状況や薬剤情報などが把握され、迅速に的確な治療を受けられる。
・入退院時などに医療・介護関係者で情報が共有され、より良いケアを効率的に受けられる。
②医療機関・自治体サービスの効率化・負担軽減
・受診時に、公費助成対象制度の紙の受給者証の持参が不要になる。
・情報登録の手間や誤登録のリスク、費用支払いに対する事務コストが軽減される。
③健康管理、疾病予防、適切な受診等のサポート
・予診票や接種券がデジタル化され、すみやかに接種勧奨が届くので能動的にスムーズな接種ができ、予診票・問診表を何度も手書きしなくて済む。
・自分の健康状態や病態に関するデータを活用し、生活習慣病を予防する行動や、適切な受診判断などにつなげることができる。
④公衆衛生、医学・産業の振興に資する二次利用
・政策のための分析ができることで、次の感染症危機への対応力強化につながる。
・医薬品などの研究開発が促進され、よりよい治療や適格な検診が可能になる。
まとめ
全国医療情報プラットフォーム実現のための施策のひとつである電子処方箋の全国導入率は、2025年7月11日現在で33.2%(デジタル庁「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」より)となっています。
また、電子カルテ情報共有サービスについては、2025年2月の愛知県から順次、北海道、山形県、茨城県、千葉県、静岡県、 石川県、三重県、奈良県、宮崎県と、1道9県の医療機関でモデル事業が実施され、2025年3月には、電子カルテ未導入の医科診療所向けの標準型電子カルテシステムα版がリリースされ、2025年中の本格稼働が予定されています。
これらの医療DXの進捗状況については、
「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームのWebページ
(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_210261_00003.html)で、議事録は公開されていませんが、資料を見ることができます。
今回の「全国医療情報プラットフォーム」の概要については、厚生労働省が、第4回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料として公表している概要図(https://www.mhlw.go.jp>content PDF)がわかりやすく図解していますので、ご覧ください。