城田健次(嘱託)(2025年9月センターニュース450号情報センター日誌より)
はじめに
2025年8月8日、赤坂グリーンクロスで「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」*の第2回が開催されました。本検討会は医療事故調査制度が今年で10周年を迎えるにあたり、これまでの医療安全施策とその課題を整理し、対応策を検討することを目的に設置された検討会であり、第1回の検討会は、2025年6月27日に、主として院内の医療安全体制に関して有識者からのヒアリングがなされました。第2回では、医療事故調査制度に関する有識者からのヒアリングが実施されましたので、その概要をご報告いたします。
医療事故調査制度の現状と課題
(1)関係各所からのヒアリング
前半では、医療事故調査制度の概要、及びこれまでの取り組みについて、医療過誤原告の会からは宮脇氏、日本医療安全調査機構からは常務理事2名、日本病院会及び日本医療法人協会からは各1名、報告がありました。詳細は本検討会のホームページに資料が掲載されておりますので、そちらに譲りたいと思いますが、その中でも、特に、「医療事故」の届出には施設間差が見られ、その件数は未だ低水準にとどまっていること、いわゆるセンター合議があり、「医療事故」としての報告が推奨される事案であっても、事故報告がなされない例が散見されること、いわゆるセンター報告書については公表すべきであること、が指摘されていたことは着目すべき点です。
これらの点については、当センターにおいて本年5月に開催したシンポジウムにおいても指摘があった点であり、今後検討すべき課題であるといえます。
(2)意見交換
後半では、前半でのヒアリングを踏まえた意見交換が行われました。ここでは、事故報告件数などの分析・調査は施設の規模感や属性などのほかその報告回数などもパラメーターのひとつとしてさらなる分析・調査が必要であること、支援団体の役割や実際の支援体制は団体ごとにかなりばらつきがあることが想定されることなどが指摘されたほか、いわゆるセンター調査報告書に関する公表に関して活発な意見交換が行われました。
特に、医療過誤原告の会の宮脇氏の意見は印象的であり、いわゆるセンター調査報告書は遺族側の受け止めとしても好印象であるところ、紛争を悪化させるという側面はなく、むしろ信頼回復に繋がりうる質の高い内容であること、かかるセンター調査報告書の公開は、他の医療機関の再発防止に必ず役に立つものであり、公表することが医療の質と安全に資するものであること、院内事故調査の作成にも大変参考になるものであり、院内事故調査報告書の質の向上にも役に立つことといった点が指摘されていました。
今後の検討会について
本検討会では、本年秋頃を目途に一定の結論が出される見通しです。
今後は、これまでのヒアリングや意見交換を踏まえてさらなる論点整理をしたうえで、議論の深化が図られるのではないかと思われます。私も、引き続き、本検討会の動向に注視して参ります。
*次回以降の日程や公表資料・議事録などは厚生労働省の医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会ホームページをご参照ください
(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_127368_00006.html)