松山健(常任理事)(2026年2月センターニュース455号情報センター日誌より)
概 要
本稿では、たびたび「美容医療の適切な実施に関する検討会」の議論状況や報告書についてご報告してまいりましたが、2025年12月に成立した改正医療法(医療法等の一部を改正する法律)において、美容医療に関連する「報告義務化」は大きな柱の一つとなっています。
この改正は、近年トラブルが急増している美容医療分野において、医療機関の透明性を高め、消費者が安全に医療機関を選択できる環境を整えることを目的としていますが、この改正に先立って、2025年8月15日、厚生労働省医政局長より各都道府県知事等あてに、「美容医療に関する取扱いについて」と題する通知(令和7年8月15日医政発0815第21号)が発出されていますので、今回は、この通知の概要をご紹介します。
通知の背景
・トラブルの急増:国民生活センター等への美容医療に関する相談が、近年、年間5,000件を超える高い水準で推移していました。
・虚偽・誇大広告と強引な勧誘:「絶対に安全」、「今なら安くなる」と即日の契約を迫ったり、不要な高額施術を追加させたりする悪質な勧誘が社会問題化しました。
・安全性への懸念:医師によるカウンセリングが不十分なまま、リスクの高い施術(注入系やレーザー等)や未承認薬剤の使用が行われるケースが目立っていました。
・行政の関与・介入の困難性
他方で、営利追求至上主義による消費者の安全性への懸念があるにもかかわらず、自由診療が中心であるがゆえに、公的保険診療に比べて行政による実態把握や介入が及びにくいという問題点が従前より指摘されてきました。
本通知では、美容医療において、不適切な事例(カウンセラー主体の治療決定など)や法令違反の判断基準が不明確であった現状を踏まえ、法令上の解釈を整理し、指導・取締りを強化することを目的としています。
以下、重要なポイントに絞ってご紹介します。
通知の内容
1.無資格者による医行為の厳格な禁止:「カウンセラー」等の無資格者が、患者の希望を聞き取り、具体的な治療法を選択・提案・決定する行為は、医学的判断を伴う「診断」と見なされ、医師法第17条違反となることが明記されています。料金説明の形式をとっていても実質的な判断が伴えば違法とされます。
2.看護師等の業務範囲の再確認:看護師等が医師の具体的な指示なく脱毛、アートメイク、HIFU施術等の医行為を行うことや、主体的に診察・治療方針の決定に関与することは、医師法および保健師助産師看護師法違反にあたると指摘されています。
3.オンライン診療の適正化:メールやチャ
ットのみで完結する診療は、対面診療と同程度の情報が得られないため、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に反し、無診察治療を禁じる医師法第20条違反となるおそれが高いとされています。
4.医療機関の管理者責任の徹底:管理者の長期不在による責務不履行、診療録の不作成・不備、医療安全管理体制(指針整備、職員研修等)の欠如は、医療法違反となり、特に、診療録は医師法施行規則が定める記載事項を全て満たす必要がある旨明記されています。
5.医療広告規制の厳格な執行:「絶対に安全」といった虚偽広告、科学的根拠の乏しい誇大広告、患者の体験談、詳細な説明を伴わない術前術後写真など、禁止される広告の具体例が改めて示されています。自由診療の内容(HIFU、糸リフト等)は原則として広告不可事項であり、ウェブサイト等で広告する際は限定解除要件を満たす必要があるとされています。
6.行政対応の強化:保健所等は、法令違反の疑いがある場合、医療法に基づき速やかに立入検査を実施でき、検査を拒否・妨害する行為(病院廃止による検査逃れを含む)は刑事罰の対象となりうるとされます。立入検査の結果、改善命令、業務停止命令、さらには開設許可の取消しといった段階的かつ厳格な行政処分が可能であり、犯罪行為が疑われる場合には、警察への相談・告発を行うよう求められています。
まとめ
本通知は美容医療におけるグレーゾーンを解消し、違法行為に対する明確な判断基準と行政の介入権限を確立するものといえます。本通知が、改正医療法による報告義務化と相まって、美容医療領域における医療機関の透明性を高め、消費者が安全に医療機関を選択できる環境の整備を促進し、医療安全が確保されることを期待したいと思います。
なお、通知は、こちらのURLからご覧いただけます。