厚労省通知「病院等において把握すべき重大事象の類型化について

松山健(常任理事)(2026年4月センターニュース457号情報センター日誌より)

医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会報告書

 2026年1月の本稿「第5回医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会を振り返って」(執筆・城田健次嘱託)で、検討会の報告書(案(執筆当時))として、院内の医療安全管理委員会等へ報告すべき重大事象について、患者への影響度や回避可能性の観点から定義(いわゆるA類型・B類型等)し、確実な把握を促す方針が盛り込まれたことをご紹介しました(2025年12月22日に、正式に報告書として公表)。

 2026年2月13日、厚生労働省は、通知「病院等において把握すべき重大事象の類型化について」を発出しましたので、ご紹介します。

報告書の方針

 報告書は、「医療機関における医療安全管理体制」と「医療事故調査制度」の2つの柱で構成され、今後、厚労省において省令改正等必要な対応を進めていくとされています。

 今回の通知は、「医療機関における医療安全管理体制」の改善策の一つである「重大事象把握の質向上」に関するA類型とB類型について再確認を行ったものです。

A類型(患者への影響度が高く、かつ回避可能性が高い12の事象)

 厚生労働科学研究において検討された患者への影響度が大きく、確実に回避する手段が普及している事象(諸外国でネバー・イベント等として定義されている事象等)です。

①手術等の侵襲的手技における患者、部位、手技又は人工物の取り違え※手術室以外で行われるものを含む。カテーテルや内視鏡を用いた検査・治療、中心静脈穿刺、その他の穿刺(末梢血管穿刺等の軽微なものを除く)を含む

②手術等の侵襲的手技における意図しない異物の体内遺残

③薬剤又は栄養剤等の投与経路間違い(経消化管/非経消化管投与の取り違え又は経静脈/髄腔内投与の取り違え)

④ハイアラート薬の過剰投与(インスリンの予定量の10倍以上の投与、高濃度カリウム液の急速投与又は抗がん剤の過量投与)

⑤既知のアレルギー又は禁忌薬剤等の投与による死亡又は後遺障害※アレルギー・禁忌情報を把握した上で、リスク・ベネフィットを医学的に判断して投与した場合を除く

⑥意図しない不適合な血液又は血液製剤/成分の輸血又は臓器の移植

⑦放射線治療における照射線量の設定間違い、照射部位の間違い又は累積線量の誤認

⑧栄養剤等の注入前に検出されなかった消化管チューブの気道への留置

⑨気管切開チューブの迷入による死亡又は後遺障害

⑩医療用ガスの取り違え、酸素投与が指示されている患者への無投与による死亡又は後遺障害

⑪医療機器の誤使用又は故障による死亡又は後遺障害

⑫重大な検査結果の確認、伝達又はフォローアップの失敗による死亡又は後遺障害※検査結果には検体検査・画像検査・生理学的検査・病理学的検査が含まれる。「重大性」の定義は各病院で設定する

B類型

 患者への影響度が高いが回避可能性は必ずしも高くないとされた 12 の事象です。

①手術等の侵襲的手技における以下の事象:術中心停止、大量出血、周辺臓器損傷又は予定外の再手術

②硬膜外麻酔又は脊髄くも膜下麻酔に関連する血腫による死亡又は後遺障害

③気道確保困難又は食道挿管による死亡又は後遺障害

④鎮静による死亡又は後遺障害

⑤カテーテルによる検査又は治療における高線量被曝

⑥生体情報モニターのアラームへの対応に関連する死亡又は後遺障害

⑦肺血栓塞栓症による死亡又は後遺障害

⑧脳空気塞栓症

⑨分娩に関連する母体の死亡又は後遺障害

⑩入院中の患者の自殺又は自殺未遂

⑪転倒・転落による死亡又は後遺障害

⑫ベッド柵による挟まりまたは拘束具の使用による死亡又は後遺障害

おわりに

 医療安全の実現のために、医療機関における医療安全管理体制の改善と医療事故調査制度の実効化が進むよう見守っていきたいと思います。

 検討会報告書及び補足資料は、こちらのURLで

ご覧いただけます(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67752.html)。