19学会声明の決意はどこへ消えた? ~2つの特定機能病院が事故報告実績ゼロ

堀康司(常任理事)(2026年5月センターニュース458号情報センター日誌より)

機構が2025年の年報を公表

 日本医療安全調査機構は、今年の3月に2025年の年報を公表し、制度発足から2025年12月までの医療事故調査制度の各種データの集計結果を明らかにしました。

報告推奨に応じない医療機関が4件に1件

 年報によれば、2025年1月から12月に、医療機関や遺族から医療事故調査・支援センタ

ーに対する相談を契機として、その事例が報告対象か否かを検討するセンター合議が行われたのは74件でした。うち36件でセンターが報告を推奨すると助言していますが、その後報告に至ったのは26件に留まり、10件については助言を受けてもなお報告が行われませんでした(27.8%)。つまり、センターから報告を推奨されても4件に1件は報告が拒まれていることになります。

 制度発足からの通算では、報告推奨の助言を受けても報告がなされなかった事例は114件に達しますが、全く改善の兆しが見られません。このような放置事例がさらに積み重なるようでは、医療に対する信頼は大きく毀損されるでしょう

2つの特定機能病院が今も報告実績ゼロ

 また、今回の年報では、全国に88ある特定機能病院のうち、2病院が、制度発足以後昨年末までの間の通算で報告実績がゼロであることが指摘されています。

 医療事故調査制度のこれまでの実績からは、700床台の施設では平均で年0.39件、800床台では年0.52件、900床以上では年0.64件の医療事故が発生したとされています。特定機能病院で10年間死亡事故が発生していないということはおよそ考えがたいところであり、この実績ゼロの2病院をこれ以上放置していては、やはり医療に対する信頼は大きく損なわれる結果となります。

これ以上の放置は許されない

 医療事故調査制度は、2004年に日本医学会加盟の主要19学会が、1999年以降に多発する医療事故が社会問題化したことに対する声明を発し、医療の安全と信頼の向上を目的として中立的専門機関に患者死亡を届け出る制度の確立に向けて努力すると宣言したことに源流を持つ制度です。

 この声明からすでに20年以上が経過し、実際の制度発足からも10年が経過しました。この間に、制度趣旨に則って少なからぬ医療機関が事故を正しく報告し、医療安全の実現を願うようになったにもかかわらず、今回の年報は、一部の医療機関が医療事故調査制度に完全に背を向けた姿勢を続けていることをあらためて明らかとしています。

 こうした悪質な報告懈怠を医療界が放置し続けるならば、事故調査を各病院の自律性に委ねる制度にはもはや限界があると言わざるを得なくなるでしょう。こうした現状に医療界は強い危機感を抱く必要があります。

 上記の19学会声明の精神に照らすならば、日本医学会加盟の各学会や日本医師会、日本病院会といった専門団体には、センター合議の報告推奨を尊重しない医療機関や報告実績ゼロの特定機能病院の施設名の公表を強く要請する等、プロフェッションとしての自律性を示したと言えるだけの具体的なアクションを起こすことが強く求められていると言えます。