柄沢好宣(常任理事)(2026年6月センターニュース459号情報センター日誌より)
民事訴訟手続のデジタル化へ
2022(令和4)年5月25日、民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)が公布されました。これは、民事訴訟手続等の迅速化・効率化等を図ることで、民事裁判を国民がより利用しやすいものとするという観点から、民事訴訟法を見直し、民事訴訟手続を全面的にデジタル化するというものです。
改正法は公布後4年以内に施行することとされていたことを受け、2026(令和8)年5月21日、改正法が全面施行されることになり、これによって民事訴訟手続のデジタル化(いわゆるフェーズ3)がスタートしました。
フェーズ3で何が変わる?
民事訴訟手続のデジタル化は、改正法成立に先立つ2020(令和2)年から、Teamsを使った争点整理手続が運用されるようになり(フェーズ1)、2024(令和6)年には、民事訴訟法の改正により、Teamsを活用しての口頭弁論期日が行えるようになるなど(フェーズ2)、段階的な運用が進められてきました。フェーズ3においても、こうした運用は引き継がれます。
これ以外に、これまで書類で提出していた訴状や証拠等の書面も、オンラインで提出することが可能になります(弁護士等の代理人はこれが原則義務化されています)。裁判所でもこれらの書面は電子データとして管理されるため、当事者等であれば、オンラインで裁判記録を閲覧することもできますし、判決書などの裁判所から送られる記録も、オンラインで受け取ることが可能になります。
また、一定の要件を満たす場合には、人証調べ(証人尋問)も、証人が裁判所以外の場所にいる状態で、ウェブ会議方式で尋問(オンライン尋問)を行うということも可能になります。
よりよい紛争解決につながるために
フェーズ3は、医療過誤訴訟を含むすべての民事訴訟手続において適用されるものです。もっとも、医療過誤訴訟の場合、証拠となる医療記録が膨大になる事案もあれば、CT等の検査画像を証拠として提出しなければならない事案もあります。そうした記録をどのように証拠化するのか、証人尋問の際にどのような方法で提示することがよいのかという、医療過誤訴訟特有の実務上の課題もあります。
また、医療過誤訴訟は、証人尋問の機会が比較的多い事件類型だと思いますが、オンライン尋問で尋問の目的が達せられるかという懸念もあります。この点は、裁判所で行われている医事紛争に関する連絡協議会などでも既に話題になっており、医師の立場からも、遠隔地ではなく、直接裁判所に出向いて裁判所に説明することに意義があるのではという意見が出たという話も聞いています。
新しいことにはつい慎重に構えてしまうという方は、私以外にも少なからずいらっしゃるものと思います。しかし、始まった以上は、よりよい形での紛争解決につながるよう、この新しい仕組みが運用されることが望まれます。新しいものにただ拒否感を示すのではなく、よりよい運用のあり方を模索していくのも、これからの医療過誤訴訟を担っていく我々弁護士に課せられた使命なのかもしれません。
参考:裁判所ウェブサイト