医療事故では?と思ったら

医療事故を疑った時やっておくべき事

人間の記憶は段々と薄れていくので、初期の段階では記憶していたことも、記録を残しておかないと、大切な事実関係があいまいなものとなってしまうおそれがあります。

医療事故ではないかという疑問を持ったら、下記の事項について整理し、メモを残しておきましょう。

  1. 当該医療事故で問題となる疾患について、医師にかかるまでの状況はどうであったか。
  2. 前医があれば、そこでどのような治療を行ったか。
  3. 医師の治療を受けた時期およびそのときの診断・治療・予後についての説明の内容はどうであったか。
  4. 医療事故発生の直前までの医師の診療内容の詳細、症状の推移の詳細。
  5. 医療事故であると思った時期とそのきっかけ。
  6. 医療事故発生時の状況。事故、副作用、合併症などについての事前の説明の有無およびその説明の内容。

 その他関係があると思われることは何でも記録に残しておきましょう。

医師から説明を受ける時

 次に医師から実際に説明を受けることになりますが、説明を受ける態度としては以下のような点に留意することが必要です。
 往々にして患者側には被害者感情があり、ともすればそれが医師との話し合いの中で爆発しがちです。しかし、医師に対する患者側の感情的対応は、医師の説明を十分に引き出せないままに終わることにもつながりますし、何より、医師に危機意識をうえつけ、カルテ等の改ざん・廃棄を誘発する危険を招くことになりかねません。したがって、ともかく冷静な態度で医師の説明を聞くことが必要です。この段階では医師に過失があるのかどうかを判断することは困難であり、説明を聞くのは状況を明らかにし、それをメモ等によって記録化することが目的なのであって、医師の責任を追及することが目的なのではありません。
 また、説明に際しては、カルテ等を使って説明を求めることが望ましいので、医師に差し支えのない範囲でカルテ等を示して説明してくれるよう申し入れてもよいでしょう。ただ、申し入れには紳士的な態度が必要です。何よりも肝心なことは、医師から説明を受けた後で必ずそれを記録しておくことです。
 実際に医師に説明を受ける際には、次の事項が一応の目安となります。

  1. 患者の異変発生までの投薬や処置の内容と、それについての事故・副作用・合併症の可能性。これらについて事前の説明と食い違っていた場合に、その食い違いの理由。
  2. 医療事故発生時の状況と医師・看護婦等の対応。事故直後に受けた説明と現在の説明とに食い違いがあれば、その食い違いの理由。
  3. 患者の異変の原因についての医師の意見。
  4. 後遺症、治癒の可能性について。

時効について

医療過誤による損害を請求する原因(理由)は、下記の2つです。
(1)不法行為責任(民法709、715など)
(2)債務不履行責任(民法415~)

(1)不法行為責任について

 民法724条で、「消滅時効」が、被害者(または法定代理人)が、損害および加害者を知ったときから3年、で完成「除斥期間」というのが、不法行為(手術など)から20年経過で成立し、それぞれ請求できなくなります。
 時効の3年は、不法行為(手術など)の時からでなく、損害および加害者を知ったときからスタートし、時効の中断事由(加害者が一旦債務を認めたとき、など)があるので、必ずしも進行していないことがあります。例えば、症状が固定していないときには、損害はまだわからない、として時効はスタートしていません。あとの20年という除斥期間は、そういうのとは関係なく、不法行為(手術など)から20年経過で請求できなくなります。

(2)債務不履行責任について

 一般の消滅時効期間の10年で時効が成立し、その起算点は債務不履行行為(手術など)の時であるのが原則ですが、やはり、損害が確定しなければスタートしないのではと言われています。時効の中断もありえます。

 事案の内容によっては、3年経てば不法行為請求権につき時効が成立している可能性があり、20年たてば、時効とは関係なく、不法行為による請求はできない。しかし、20年たっても、まだ債務不履行に基づく請求は、時効が中断していればできる可能性もあります。例えば、事故から7年たっていても、不法行為による請求ができる場合もありますし、債務不履行による請求はできます。

 

 いずれにしても、時効については専門的な判断が必要となりますので、できるだけ早く弁護士に相談なさることをお勧めします。