徳島地裁「地元密着委員会」の欠陥

弁護士堀康司(常任理事)(2002年4月センターニュース169号情報センター日誌より)

徳島地裁「地元密着委員会」の欠陥

  徳島地裁は「医事鑑定人候補者推薦委員会」を発足させました(H14/3/13毎日新聞)。報道によれば、徳島大学医学部附属病院長(=委員長)及び徳島大学医学部長が推薦した医師(5名)の計6名によって構成される委員会が、医療過誤訴訟の鑑定人候補者を徳島地裁に推薦する仕組みとのことです。


  徳島地裁に係属する事件では、地元徳島大学医学部と密接な関連を持つ医師や医療機関が被告となっている事案も少なくないと想像されるところです。徳島大学関係者のみで構成された委員会が徳島地裁の訴訟について鑑定人候補者を推薦する仕組みは、同地裁における裁判の公平性を著しく害する可能性をはらんでいます。


  今年に入ってから、各地裁では、医療過誤訴訟の迅速化に関連して、地元大学病院との連携を強めようという動きが加速しています(医療訴訟ガイダンス等。センターニュース167号嘱託日誌参照。)


  しかし、このような地元に密着した手法では、仮に訴訟の迅速性が実現できたとしても、訴訟の公正さが犠牲にされてしまいます。迅速さと公正さは訴訟という車の両輪であり、一方を犠牲にする「改善」には何の意味もありません。


  地元密着が裁判の公正さに与える深刻なダメージについて全く無頓着な各裁判所の動きに対しては、更なる情報収集の上、批判的監視を加える必要があると感じています。


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